金刀比羅宮が新たに国の重要文化財に指定へ 琴平町

「こんぴらさん」の愛称で親しまれる琴平町の金刀比羅宮が、新たに国の重要文化財に指定されることになりました。

国の重要文化財に指定されるのは、本宮の本殿や拝殿など、12棟の建造物です。

象頭山の中腹に位置し、海の安全を守る現在の金刀比羅宮は、古くは寺院として全国各地から多くの人が参拝に訪れ幅広く親しまれてきました。

明治初期の神仏分離によって、神社として再編することになり、明治7年から11年にかけて、本宮の拝殿や本殿などが新たに建てられました。

今回、国の重要文化財に指定される12棟について、国の文化審議会は、本宮の天井や壁面に施された、桜を描いた「桜樹木地蒔絵」などには格式の高さが表れていることや、屋根を支える木組みや、「手挟」と呼ばれる部分の装飾などが、地元の宮大工がそれまでの仏教的な建築表現を払拭するために施した歴史的価値の高いものとして、17日、重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申しました。

県によりますと、県内にある国の重要文化財の建造物はこれで32件になるということです。

金刀比羅宮の琴陵泰裕宮司は、「価値が認められたことは非常にありがたい。いまの神社の様式に変わるまで、江戸時代以前から続いてきた長い歴史の重みを感じてもらえたら」と話していました。


<「桜樹木地蒔絵」よみがえらせたのは輪島塗の漆芸家>
重要文化財に指定された本宮の見どころのひとつが、「桜樹木地蒔絵」です。

本殿や拝殿、それに中殿の天井に138枚、描かれています。

明治11年に描かれましたが、花びらに使われていた銀が黒く変色したり、模様がすべて剥がれ落ちたりと、傷みが進んでいたことから、漆芸家の手によって20年前に再現されました。

銀が使われていた花びらに、プラチナを3枚重ねるなど、耐久性を高める工夫がされています。

まき絵をよみがえらせたのは、石川県輪島市の3人の輪島塗の漆芸家でした。

監修を行った漆芸の人間国宝で、高松市の山下義人さん、72歳によりますと、当時、香川県で、138枚ものまき絵を描くのは、人手が足りないと考え、20代のころから親交のあった輪島塗の漆芸家たちに依頼したといいます。

2か月に1回ほど輪島に通って、試作品の制作や話し合いを何度も重ねながら、5年かけて仕上げました。

山下さんは、「『木地蒔絵』は、レベルが高い技法ですが、膨大な数をたった5年で本当によくやってくれました。同世代で一丸となったことで成し遂げることができたと思います」と振り返っていました。

ことしの元日に起きた能登半島地震の翌日には、3人全員と電話で連絡をとり、無事を確認したということで、「もしも今、会うことができたらおそらく抱き合って肩をたたき合うと思います。まき絵が白く輝き続けてほしいと願っています」と話していました。