四国で初めてイルカの繁殖に成功 高松の新屋島水族館
高松市にある新屋島水族館で4月、イルカの赤ちゃんが誕生しました。
国際的な批判がある追い込み漁で捕獲したイルカを入手することが困難になる中、各地の水族館などが繁殖を試みていますが、新屋島水族館によりますと、1か月近くたっても元気で、繁殖に成功したのは四国で初めてだということです。
新屋島水族館によりますと、去年12月にバンドウイルカの「雪(ゆき)」が妊娠していることがわかり、4月30日、赤ちゃんを出産しました。
赤ちゃんの名前は「ナナ」で、性別はまだ分かっていませんが、体長およそ1メートル30センチに育っているということです。
飼育用のプールでは、母親の「雪」と一緒に泳いだり、水面から元気よくジャンプするなど可愛らしい姿を見せていました。
水族館のイルカをめぐっては、追い込み漁で捕獲することが国際的な批判を浴び、入手が困難になっていることから、各地の水族館などが繁殖を試みていて、新屋島水族館もおととし(2021年)から取り組んでいました。
新屋島水族館によりますと、生まれてから1か月近くたっても元気で、繁殖に成功したケースは、四国の水族館などでは初めてだということです。
新屋島水族館のスタッフの保浦祐菜さんは、「生まれてきた時よりも体ががっちりしているし、時折ジャンプもするので、元気に生活していると思う。多くの方に見てもらいたい、成長を見守ってもらえたら」と話していました。
誕生したイルカの赤ちゃんは、6月10日から一般に公開されます。
【“困難乗り越え”イルカ繁殖に成功】。
イルカの繁殖を目指す取り組みは全国で進められていますが、そう簡単なことではありません。
新屋島水族館でも2年かけてようやく成功し、四国のほかの施設では、赤ちゃんが生まれたものの1か月もたたずに死んでしまったケースもあったということです。
なぜ、繁殖が難しいのかというと、まず妊娠中に流産したり、死産になったりする可能性があるため、お母さんイルカを定期的に詳しく検診する必要があります。
母子ともによい健康状態を保つことができて、ようやく出産を迎えることができるわけです。
ただ、無事に生まれても決して気は抜けません。
イルカの赤ちゃんが、生まれてから1か月の間に死んでしまう確率が、およそ20%というデータもあります。
原因としては、母乳をきちんと飲めなかったり、泳いでいる時に誤って水槽のガラスにぶつかったりするケースがあるといいます。
新屋島水族館で生まれた今回のイルカの赤ちゃんがここまで成長したのは、こうした苦難を乗り越えてきた結果といえるわけです。
その意義について、イルカの繁殖に詳しい三重大学の船坂徳子准教授は、「順調に1か月間成長していて、太ってきているのは価値があることだと思うし、繁殖に向けて努力をしたことが実を結んで今回の成功につながったのであれば、意義があることだと思う。今後の日本のイルカ飼育に向けても大きな一歩だ」と話していました。