琴平町 不適切保育 当時の所長や保育士らを訓告などの処分

琴平町の旧保育所で、昨年度、園児に対する不適切な保育が行われていた問題で、琴平町は、当時の所長など合わせて7人を訓告や厳重注意の処分とし、片岡町長も給料を10%減額することを決めました。

琴平町の旧北保育所では、昨年度、保育士が園児をおんぶひもでいすにくくりつけたり、別の保育士が給食を食べないことを理由に園児をほかのクラスに連れて行って放置したりするなど、合わせて5件の不適切な保育が行われていたことが県の調査でわかり、町は不適切な保育を受けた園児の保護者に謝罪しました。

県によりますと、不適切な保育に関わった保育士はこれまでに合わせて4人で、このほかにも、保育士が、園児を押し入れや通用口に閉じ込めていた、保育士が園児に対して必要以上の力で腕を引っ張った給食の大半をこぼした園児に対し、代わりの食事を与えなかった、といった行為も確認されたということです。

旧北保育所は、現在は「北こども園」に名称が変更され園長も代わっていますが、いずれも、こうした問題行為については把握していなかったということです。

この問題で琴平町は、今月20日付けで、当時の保育所の所長のほか「北こども園」の園長や保育士など、合わせて7人を訓告や厳重注意の処分とするとともに、監督責任として片岡町長がみずから、来月の給料を10%減額するほか、副町長も5%減額することを決めました。

今回の問題は、同一と見られる人物から2度の匿名の投書を受けて、県が調査した結果、発覚したものです。

1度目は去年7月で、県は、投書を受け取ったその日のうちに園に立ち入り、その後、職員全員に対し、不適切な保育がなかったかについて、聞き取りを行いましたが、誰も関わりを答えなかったため「事案はなかった」と結論づけていました。

その後、12月に寄せられた2度目の投書では、問題の行為が令和3年度中のことだったことがわかり、県は、当時職員だった人たちにも対象を広げて、再度聞き取りを行いました。

その結果、複数の目撃証言などが集まり、5つの行為を認定しました。

1度の調査で事案を確認できなかったことについて、県は、いずれの聞き取り調査も、秘密が保持されつつ、証言しやすい環境だったとして、特に問題は無かったとしています。

保育士による不適切な保育は全国でも相次いでます。

静岡県裾野市の保育園では、元保育士が園児に暴行したとして逮捕されたほか、富山市では園児が狭い倉庫に閉じ込められ、仙台市でも園児が柵に押し付けられるといった行為が明らかになっています。

こうした問題を受けて、厚生労働省や文部科学省などは去年12月、不適切な保育があった場合の、施設や自治体間での情報共有の体制などを把握するため、実態調査を行っています。

調査対象は、去年4月から12月下旬までの期間で、このうち高松市では、不適切な保育が疑われるとして立ち入り検査や聞き取りなどを行ったケースは15件あり、このうち不適切な保育があったと確認されたケースは7件でした。

今回の問題の原因について琴平町は、保育士自身の保育に対する認識不足に加え、保育現場の人手不足や、職場で相談や意見を言いやすい環境が整っていなかったことなどをあげています。

また、今月17日に行われた保護者向けの説明会では、管理責任を問う声に加えて「保育士への研修をしてほしい」とか「保育士を増やしてほしい」といった声が寄せられたということで、町はこうした意見も踏まえ、再発防止に努めるとしています。

NHKが去年取材した、県内の現役保育士の女性も、おむつ替えの際に園児に消臭スプレーをかけたり、園児の頭に布団をかぶせてたたくといった同僚の不適切な行為を見てきたと話していましたが、指摘しづらい雰囲気があったほか、園長も見て見ぬふりをしていたと指摘していました。

また、この女性は、保育現場の「余裕のなさ」も指摘していて、必要な書類の作成などに伴う長時間労働の常態化や、業務量に見合わない待遇の悪さもあり、精神的に追い詰められる保育士もいたと証言しています。

保育などが専門の香川大学教育学部松本博雄教授は「例えば、子どもの配置基準は1歳児なら子ども6人に対して、大人が1人で、それだけで時間が無くて大変になる。時間的なプレッシャーを背負いながら、子ども1人ひとりの要求に応えていく必要があるが保育のスキルが充分になかったりすると『脅しの保育』につながる」と指摘しています。

また松本教授は、不適切な保育の実態は自治体による監査だけでは防ぎきれないと指摘し「『ヒヤリハット』の事例があった時に保育施設内で声をあげられる体制をどう作り、保育士を支えていくのかを考える必要がある」と話しています。