袴田さん再審 弁護団が本人作成の意見書提出

58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審=やり直しの裁判で、24日、14回目の審理が行われ、弁護団は、40年あまり前に袴田さん本人が作成した意見書を証拠として提出しました。
意見書には、「5点の衣類」について「私の物ではない」などと、無実を訴える内容がつづられています。

58年前の1966年に今の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審は、24日静岡地方裁判所で14回目の審理が行われました。
再審では、事件の発生から1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかり、有罪の決め手となった「5点の衣類」をめぐり、再審請求の審理で弁護側が推薦した専門家が行ったDNA鑑定について再び争われています。
この鑑定では、「白い半袖シャツを着た犯人が犯行時にけがを負った」と検察側が主張している箇所の血痕について、「DNA型が袴田さんと一致しない」と結論づけています。
これについて検察は、「衣類は事件発生から40年以上にわたり常温で保管されていた。血液由来のDNAは劣化が甚だしく、そもそも鑑定が困難だ」と述べました。
さらに、「捜査や裁判の過程で衣類は繰り返し持ち出されるなどしていて、外部のDNAで汚染されていた可能性がある」と主張しました。
一方、弁護団は、袴田さんが41年前にみずから作成した、再審開始を求める意見書を証拠として提出しました。
原稿用紙14枚に及ぶ意見書では、5点の衣類について「ズボンは私にまったく到底はくことができない」とか「血染めの衣類は私の物ではない」などと、自身の無実を訴える内容が自筆でびっしりとつづられています。
次回の審理は5月22日に開かれ、検察の論告と求刑、弁護団による最終弁論が行われてすべての審理が終わる予定で、袴田さんに代わって姉のひで子さん(91)が法廷で意見を述べることになっています。

【弁護団 “死刑求刑許されず”】
審理のあと、袴田さんの姉のひで子さんや弁護団が会見を開きました。

この中でひで子さんは、5月22日の審理の最後に意見を述べることについて「今は何も言えなくなっている巌の本当の気持ちを、本人が昔書いた陳述書などから抜粋して読み上げたいと思っている。48年間拘束され、釈放から10年になるがいまだに後遺症があり、一生背負っていくと思う。ともかく頑張って巌の気持ちを伝えたい」と述べました。

弁護団の事務局長の小川秀世弁護士は、5月22日の審理で予定されている検察の求刑について、「再審で有罪を求める立証をすること自体は検察の仕事かもしれないが、十分な立証ができているとは思えず、袴田さんに死刑を求刑することは許されない」と話していました。

また、田中薫弁護士は、袴田さんの意見書を証拠として提出したことについて「事実を一番知っているのは袴田さんなので、本人が書いた意見書が裁判官の目に触れるのは重要だ。本人が述べていることが過去の裁判では十分に受け止められていなかったと思う」と話していました。