通園バス女児死亡事件 元園長は起訴内容認め遺族に謝罪

おととし9月、静岡県牧之原市の認定こども園で当時3歳の女の子が通園バスの車内に置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなった事件で業務上過失致死の罪に問われている当時の園長とクラスの元担任の初公判が静岡地方裁判所で開かれました。
元園長は起訴された内容を認めた上で遺族に謝罪しました。

おととし9月5日、牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」の駐車場に止められた通園バスの車内に、園に通っていた河本千奈ちゃん(当時3)がおよそ5時間にわたって置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなりました。
この事件で、当時バスを運転していた元園長の増田立義被告(74)は園児らが降りる際に車内の確認を怠ったほか、クラスの元担任の西原亜子被告(48)は、欠席したと思い込み、保護者への確認を怠ったとしてそれぞれ業務上過失致死の罪に問われています。
23日、静岡地方裁判所で開かれた初公判で2人は「間違いありません」などと述べ起訴された内容を認めました。
今回の裁判には千奈ちゃんの両親が「被害者参加制度」を利用して審理に臨み、法廷には傍聴席から見えないようについたてが設けられました。
検察は冒頭陳述で、「バスが園に到着してほかの園児が降りた後、車内にいた千奈ちゃんは別の送迎バスを見て、『後ろから来てるよ』などと言ったが、元園長はこれに気づかなかった」と主張した上で、証拠としてバスのドライブレコーダーに当時の音声が残っていると説明しました。
被告人質問では、遺族から大切な存在を奪ったことをどう思うか、弁護士に問われたのに対し、元園長は、「腹立たしく、情けなく思っています。千奈ちゃんを失わせてしまったことを両親におわび申し上げたい。私の責任だと思っています」などと述べ、謝罪しました。
また、千奈ちゃんの父親は元園長に「千奈がバスの中で自分ではどうすることもできずに1人で亡くなった気持ちを考えたことがありますか」と直接、尋ねました。
これに対し元園長は「苦しい思いをしていたんだなと思いました」と述べました。
次回の審理は5月15日に開かれ、元担任への質問などが行われます。

【被告人質問のやりとりは】
初公判で行われた被告人質問の主なやりとりをまとめました。

《弁護士からの質問》
弁護士から、「車内の確認をしなかったのは園児が残っていないと思ったからか」と問われたのに対し、元園長は、「同乗していた乗務員がバスのスライドドアを閉めてしまったので、もういないと思いました」と答えました。
また、事件の1年前に福岡で同様の事件が起きたあと、国が園での安全計画を見直すよう通知したのに、人数確認のマニュアルを作らなかった理由を問われると、「病院に入院していたのでいずれ作ればいいと思っていました」と答えました。
その上で、「早急に作っておくべきだったと反省しています」と述べました。
さらに、弁護士は、遺族から大切な存在を奪ったことをどう思うか、尋ねました。
元園長は、「腹立たしく、情けなく思っています。千奈ちゃんを失わせてしまったことを両親におわび申し上げたい。私の責任だと思っています」などと述べ、謝罪しました。

《父親からの質問》
また、千奈ちゃんの父親は、およそ10分にわたって元園長に直接質問しました。
はじめに、「千奈がバスの中で自分ではどうすることもできずに1人で亡くなった気持ちを考えたことがありますか」と尋ねると、元園長は「はい」と答えました。
父親が「どういう気持ちだったと思いますか」とさらに問うと、元園長は「苦しい思いをしていたんだなと思いました」と述べました。
続いて、「廃園にすることが償いの一つだと思いませんか」と尋ねると、元園長は「廃園に関しては私からは言えません」と述べるにとどまりました。
さらに父親は、元園長が弁護士からの質問の中で「園児とのふれあいが楽しかった」と述べたことに触れ、「ふれあう時間をマニュアル作成に使っていれば事件を防げたのではないですか」とただしました。
元園長は「はい」と答えましたが、父親から「でもやらなかった」とさらに問われると、何も答えられませんでした。