袴田さん再審「5点の衣類」DNA鑑定 弁護団検察主張交わす

58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審=やり直しの裁判で17日、13回目の審理が行われ、争点となっている「5点の衣類」に付いた血痕のDNA鑑定をめぐって、弁護団と検察の双方が主張を交わしました。

58年前の1966年に今の静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審は17日、静岡地方裁判所で13回目の審理が行われました。
法廷では、事件の発生から1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかり、有罪の決め手となった「5点の衣類」をめぐり、再審請求の審理で弁護側が推薦した専門家が行ったDNA鑑定について再び争われました。
この鑑定では、「白い半袖シャツを着た犯人が犯行時にけがを負った」と検察側が主張している右肩の部分の血痕について、「DNA型が袴田さんと一致しない」と結論づけています。
弁護団は改めて、「鑑定は標準的で高性能な検査機器を使って行われていて、高い信頼性が担保されている」と述べました。
その上で、「事件当時、袴田さんは右肩にけがをしていたが、何者かが袴田さんを犯人として陥れるために、右肩の状態にあわせて半袖シャツを作り出したと考えるのが自然だ。袴田さんは無罪です」と主張しました。
これに対し検察は、弁護側の専門家の鑑定について「『5点の衣類』に付着した血液そのものではなく、衣類が発見されたあとに付着したDNAなどを評価している可能性が極めて高い」と述べました。
その上で、「鑑定で使われた手法は科学的に説明できない多くの矛盾があり、ほかの専門家による検証を経たものではない。この鑑定結果をもって衣類が犯行時の着衣でも、袴田さんのものでもないとする弁護団の主張には理由がない」と反論しました。

【来月の審理で遺族が意見陳述へ】
袴田さんの再審で、事件で亡くなった専務の遺族の意見陳述が行われる見通しになったことが、弁護団などへの取材でわかりました。

遺族から検察に意見陳述の申し出があったということで、5月22日の審理で、検察官が論告と求刑の前に意見書を読み上げる形式で行われ、遺族本人は出廷しないということです。
関係者によりますと、遺族は袴田さんへの処罰感情などを伝えたいと望んでいるということです。
審理のあとの会見で、弁護団の事務局長の小川秀世弁護士は「遺族の方がどういうお気持ちで意見を出されるのかは分からないが、今回の再審は、袴田さんの有罪について合理的な疑いが生じた後の裁判なので疑問に思います」と話していました。
弁護団は今後、意見陳述に反対する意見書を裁判所に提出する方針だということです。