【リニア解説】JRが知事に反論会見 「47項目」とは?

2024年に入って1か月あまりですが、リニア中央新幹線について、県やJR東海の動きが活発になっています。大前提として、去年12月に環境保全の有識者会議がまとまって国の議論が終了したこと、JR東海が品川・名古屋間の開業を「2027年」から「2027年以降」に変更したことが挙げられます。この1か月で何があったのか、振り返ります。
(静岡局記者・仲田萌重子)

(記者)
ことしに入ってからの動きですが、大きなものが2つありました。1つが1月下旬に行われたJR東海の知事への異例の反論会見。もう1つが、県がこれまで議論すべきとしていた47項目が整理され、2月5日に公表されたことです。
1つずつ振り返ります。まずは、JRの異例の会見です。JR東海が先月24日に開いた会見は、JR幹部の戸惑いの言葉から始まりました。

(1月24日JR東海の会見・木村専務執行役員)
「知事の発言は事実関係が異なり困惑している。正確に認識して発言してもらいたい」

(キャスター)
リニアの問題では、川勝知事がJR東海によく苦言を呈していますが、いつもと逆ですね。

(記者)
そうなんです。定例会見や報道機関のインタビューでリニアについて知事が述べている見解や発言が、事業主体であるJR東海の実際のリニア計画とは異なる内容だと会見で指摘したんです。
具体的には、まず開業時期についてです。川勝知事は、去年12月にJR東海が品川ー名古屋間の開業時期の計画を「2027年以降」に変更したことへの受け止めを問われ、県内の工事についても、「品川ー大阪間の全線開業の2037年まで猶予を与えられた」などと発言しました。
これについて、JR東海は会見で「経営や施工能力の観点から大阪までの全線の一括工事はできない。静岡での工事に1日も早く着工し、品川ー名古屋間を早急に開業させるということだ」として、2027年が2037年に延びたのではないと知事の見解を否定しました。

(キャスター)
川勝知事が提唱している神奈川ー山梨間の先行的な開業についても反論していますよね。

(記者)
ここで出てくるのが、すでに走行している山梨県笛吹市などを通るリニアの実験線なのですが、この実験線、全長およそ43キロで、2013年に完成しました。
これについて、知事は「JR東海が、2011年の国の会議で出した資料で『山梨の実験線工事から間断なく着工する』と説明しているので、山梨ー神奈川間で先行的に開業するべき」などと発言していいます。
これについてもJR東海は「2011年は実験線を当時の18キロから全線区間である43キロに延伸する工事中で、実験線の完成のために延伸していくという趣旨だ。そもそものリニア整備は東海道新幹線の経年劣化対策や災害対策であり、部分開業は考えていない」ときっぱり否定しました。
JR東海の反論について、川勝知事はその5日後、次のように話しました。

(1月29日の会見・川勝知事)
「公表されているデータに基づいて申し上げている」

(キャスター)
知事はこのように発言していますけど、見解の違いならまだしも、JR東海の計画とは明らかに違いますよね。関係者はどう思っているんでしょうか。

(記者)
周辺自治体からは異論が上がっています。まず、リニア担当の副知事だった静岡市の難波市長です。

(2月1日の会見・静岡市の難波市長)
「開業時期はJR東海が自社の事業としてやること。地域の要望は聞いてほしいが、静岡県にリニアは止まらない」
続いて大井川流域の自治体の島田市の染谷市長です。

(2月1日の会見・島田市の染谷市長)
「知事は政治家として発言されていると思うが、分をわきまえて話をすることが誠実に物事を前進させるために大事なことだ」

(記者)
開業についてはJR東海が決めることであり、それに干渉するのは筋違い。不確かな情報を発信するのはどうなのか、ということです。結構厳しい意見だと思います。

(キャスター)
もう1つの動き、47項目の整理についてはどうでしょうか。

(記者)
この「47項目」というのは、川勝知事がリニア事業に異を唱え始めた2年後の2019年に、県がJR東海に対して出した県内工事に当たって、対策が不十分だとする水資源や自然環境などへの47項目への対応のことです。
分野ごとでは、大井川の水のいわゆる全量戻しの方法などの「水資源」、工事による 南アルプスの動植物の影響などの「生物多様性」、そしてトンネル工事で発生する「発生土」の問題をあげていて、川勝知事は会見で、「この47項目の解決を地域住民が了解しなければ着工が認められない」と述べています。

(キャスター)
国はどのように対応したのですか。

(記者)
この47項目の懸念点を受けて、国に設置された有識者会議では、2021年の12月には「水資源」が、去年の12月には「生物多様性」と「発生土」の分野の議論が終わり、報告書がまとめられました。

(キャスター)
きのうのニュースでお伝えした県の会見は、この報告書を踏まえて、47項目の懸念点を整理し直したと。

(記者)
そうなんです。ただ、具体的に見ていきますと、県の受け止めでは、47項目中17項目のみ終了で、残る30項目で今後も議論が必要だという主張でした。

分野ごとに見ていきます。
まず「水資源」は、26項目のうち、全量戻しの方法など、17項目で終了した、としました。
一方で、生物多様性の17項目とトンネル工事で出た発生土の問題の4項目については、「進捗はしている」としたものの、すべて「議論は終了していない」という評価でした。
県はこれらの項目について今後の県の専門部会でJR東海と話し合うことにしています。

(キャスター)
具体的にはどういったことについて議論を求めるのですか。

(記者)
例をあげると、生物多様性では、沢の上流域の生物の生息状況のさらなる調査。発生土では最大規模の置き場である「燕」という場所の崩壊のリスクなどです。

(キャスター)
関係者はどういう反応なのでしょうか。

(記者)
生息状況のさらなる調査は、国の有識者会議の座長が「時間がかかりすぎる」として否定し、発生土置き場のリスクは、静岡市が「発生土で 下流の災害危険度が高まるとはいえない」との見解を示し、県とは意見が分かれていて、協議が終わる見通しは立てられない状況です。

(キャスター)
国はどういう受け止めでしょうか。

(記者)
きのうの会見を受け、国土交通省はNHKの取材に対し「47項目も含め国の有識者会議で議論した水資源と環境保全の問題で今後、議論すべき残された論点はない。今後は、報告書に基づいてJR東海が地域の理解を得ながら対策をすすめ、国も継続的に確認していく」としています。

(キャスター)
国が「議論すべき残された論点はない」と言っていますが、県としてはまだ議論をやるということなんですね。

(記者)
川勝知事は、これまで地元の意見を尊重するよう繰り返しJR東海に求めてきましたが、事業主体のJRが間違いだとする、情報や独自の見解を発信し、混乱させることは地元のためになるとは思えませんし、県の信頼にも関わってくると思います。
今後もJRや自治体と協議を続けていくのならば、関係者の意見を十分に聞きながら、コミュニケーションを密にしていくことが必要だと強く感じています。