袴田さん弁護団の意見書 “検察側 前提条件に重大な誤り”

57年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの弁護団が、再審=やり直しの裁判に、新たな証拠として提出する専門家の意見書の内容が関係者への取材でわかりました。
意見書では、検察側の鑑定書には、前提条件に重大な誤りがあると主張する方針です。

57年前に今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)について、東京高等裁判所はことし3月、逮捕から1年以上あとに現場近くのみそタンクから見つかった血痕のついた衣類が、捜査機関によってねつ造された疑いに言及した上で、再審を認める決定を出しました。
やり直しの裁判では、長期間みそに漬けられた血痕に赤みが残るかどうかが改めて争点になる見通しで、検察は、法医学者7人による共同の鑑定書などを新たな証拠として準備し、「みその醸造の専門家によれば、仕込みでは空気を抜く作業があり、タンクの中は酸素がほとんどないため、血液の赤みの原因であるヘモグロビンの酸化が妨げられる。血痕に赤みが残っていた可能性は否定できない」などと主張する方針です。
これに対し、袴田さんの弁護団は、旭川医科大学の法医学の専門家の意見書を新たな証拠として提出する方針で、この意見書の内容が関係者への取材でわかりました。
それによりますと、意見書では、「事件発生からまもなくタンクの中に衣類を入れたとしても、その後にみその原材料が投入されるまでの少なくとも20日間は十分な空気にさらされていて、酸素がほとんどなかったとはいえない」として鑑定書には前提条件に重大な誤りがあるとしています。
その上で、「ヘモグロビンが酸化して赤みを失う化学反応が進行するために必要な酸素は極めて微量で、みその原材料などに含まれる酸素だけでも赤みは失われる」などと主張する方針です。
検察と弁護団は、それぞれ専門家の証人尋問も請求する方針で、9月27日に開かれる次回の3者協議で今後の審理のスケジュールが話し合われる見通しです。