消防隊員死亡のビル火災 事故調査委員会が市に報告書を提出

去年、静岡市の繁華街にあるビルで飲食店などが焼けた火事で、消火活動にあたっていた静岡市消防局の消防隊員が亡くなった原因などを調べてきた事故調査委員会は、1日、報告書を市に提出しました。
報告書では「事故の要因は特定できなかった」とした上で現場でとられた退出方法について「安全よりも迅速性と効率性が優先された可能性がある」などと指摘し、再発防止を求めました。

去年8月、静岡市葵区呉服町にあるビルで、3階に入っていた飲食店などが焼けた火事では、消火活動にあたっていた静岡市消防局駿河消防署の山本将光さん(当時37)が死亡しました。
この事故の原因を究明するため、静岡市消防局が設置した事故調査委員会は、これまでの検証結果を報告書としてとりまとめ、1日、難波市長に提出しました。
今回の火事で山本さんは2人の隊員とともに3人で消火活動にあたり、退出の指示を受けたあと、何らかの原因で火元となった倉庫の中に1人で入って亡くなっています。
報告書によりますと、3人は当時、消防局の活動基準で定められている隊員どうしをロープでつなぐ手法はとらず、地面に置いたホースをつたって退出しようとしましたが、山本さんはこの退出方法を訓練した経験がなかったということです。
報告書では、事故の要因については本人が亡くなっていることから「特定できなかった」とした上で、現場でとられた退出方法について、「安全よりも迅速性と効率性が優先された可能性がある」などと指摘しました。
その上で、今後の再発防止策として、「手順が明確に定まっていない方法や訓練経験のない方法が現場で安易に選択されないよう、安全意識を徹底することが求められる」と提言しました。
静岡市の難波市長は、消防隊員の活動基準について、「あいまいさをなくすことが極めて大事なので、着実に安全管理がされるよう見直さなければならない」と話していました。
静岡市消防局は、1日午後、この報告書を市のホームページで公表しています。