熱海市の復興計画変更 被災者から批判の声

被災から2年たつ今も多くの人たちが生活再建の見通しを立てられない中、熱海市が復興計画を見直したことをめぐって、被災者から批判の声が相次ぐ事態も起きています。

熱海市は、去年とりまとめた「復興まちづくり計画」の中で示していた宅地整備の方針を、ことし5月になって見直すと発表しました。
これまでの計画では、「被害を受けた土地を市がまとめて買い取って宅地を整備し、住宅の再建を希望する人に分譲する」と説明していました。
この方針に対し、一部の被災者から「もともと住んでいた場所に戻れなくなるのではないか」などと懸念の声があがったということで、市は「宅地の復旧工事は被災者が行い、その費用の9割を補助する」という方針に変更しました。
ところが、6月開かれた熱海市議会で、市が見直しにあたってヒアリングを行ったのは、去年実施した個別面談に応じた、地区を離れて暮らす124世帯のうち、「同じ場所での住宅再建を希望している」と回答した10世帯にとどまっていたことがわかりました。
こうした対応について住民説明会では、出席者から「変更によって不利になる人もいるのに、なぜ意見を聞かないのか」とか、「住民と行政の信頼関係が成り立っていない」などと批判の声が相次ぎました。
市は、市議会に提出していた関連する予算案を取り下げていて、「議会と相談しながら修正を含めて着地点を探っていきたい」としています。
熱海市の対応について、社会心理学が専門で兵庫県立大学の木村玲欧教授は「一部の人だけの意見で方針を決めてしまうと、それ以外の人たちの不信感につながるので、合意形成としては非常によくなかった」と指摘しました。
その上で、今後求められる対応については、「被災者との信頼関係がうまく構築されていないという現状をしっかり受け止めて、抜けや漏れのない形で一人ひとりの被災者の声を聞き、できるだけ希望に近い形で合意形成を進めていく必要がある」と話しています。