最大震度6強の地震から2年 復旧工事が続く施設も

宮城県と福島県で最大震度6強の揺れを観測し、県内で2人が死亡した地震から16日で2年です。
被害を受けた公共施設などでは復旧工事が進められているほか、脱線した東北新幹線では新幹線をより早く緊急停止できるシステムが先月から導入されるなど対策が進んでいます。

おととし3月16日の深夜、福島県沖でマグニチュード7.4の地震が発生し、県内では登米市と蔵王町で最大震度6強の揺れを観測し、2人が死亡、108人が重軽傷を負いました。
また、広い範囲で住宅への被害も相次ぎ、県によりますと、全壊が51棟、半壊が616棟、一部損壊が2万1000棟あまりにのぼりました。
地震の影響で各地の文化財や公共施設も被害を受け、仙台市の仙台城跡では石垣が崩れたほか、白石市の「文化体育活動センターホワイトキューブ」ではコンサートホールの天井の一部が崩れ、今も復旧工事が続いています。
一方、天井が落下する被害が出た利府町にある県営のプールでは、工事が進み、被害が出たメインプールと飛び込みプールは16日、利用が再開されます。
この地震では走行中の東北新幹線が脱線し、全線で運転が再開されるまでおよそ1か月かかりました。
JR東日本では地震を検知した後、新幹線をより迅速に緊急停止できるよう地震計を改修するなど新たなシステムを導入し、先月、運用を開始し、地震への対策が進められています。

【仙台城跡では】
おととしの地震で仙台市にある「仙台城跡」では石垣が崩れるなどの大きな被害が出て、今も復旧工事が続いています。
「仙台城跡」は、仙台藩の初代藩主、伊達政宗がおよそ400年前に築いた仙台城の城跡で、現在も残る石垣や土塁などが国の史跡になっています。
おととしの地震で仙台市では最大震度5強の揺れを観測し、仙台城跡では石垣が崩れたり、変形したりする大きな被害が出ました。
市によりますと、5か所の石垣で被害が確認され、崩落や変形は3年前の2月に起きた福島県沖地震で被災した部分を含めて200メートル以上に及んだということです。
このため、石垣周辺の市道の一部では今も通行止めが続き、復旧工事が行われていて、15日も重機による作業が進められていました。
復旧にかかる費用はおよそ10億円で、市では去年、復旧費用にあてるためクラウドファンディングを行い、およそ2か月で目標金額を上回る2000万円あまりが集まりました。
石垣の工事には耐震性を高める工法を取り入れることも検討しているということで、来年3月末の完了を目指しているということです。
売店などを運営する青葉城本丸会館の末谷和稔チーフマネージャーは「観光にも影響が出ていていち早く復旧して欲しい」と話していました。

【白石のホワイトキューブは】
白石市の「文化体育活動センターホワイトキューブ」は体育施設やコンサートホールなどが併設されていて、2年前の地震で、コンサートホールのつり天井が一部崩れて落下したほか、建物のガラスが割れるなどの被害が出ました。
市によりますと、法律の改正でつり天井ではない設計で進められ、財源を確保するのに時間がかかったということで、去年11月から本格的な工事が始まり、現在は足場を組み、天井を貼るための準備作業が行われています。
市によりますと、ホールの天井部分については、鉄骨にパネルを貼り付ける形で強化するということで、施設全体で、合わせて17億6000万円ほどかけて工事を進め、ことし10月までに終わる見通しだとしています。
期間中、これまでホールで行ってきた合唱団の発表会などは施設の別の場所で行っているということですが、ことし10月上旬には市政70周年の式典を行う予定だということです。
白石市まちづくり推進課の熊谷祐一地域振興係長は、「より安全な形のホールになるので、少しでも早く復旧して地元の人などより多くの人に利用してほしいです」としています。

【利府町の県営プールは】
利府町にある県総合運動公園総合プールでは、おととしの地震でプールの天井がおよそ20メートルにわたって落下するなどの被害が出ました。
このため耐震補強をした新しい天井に張り替えるなどの復旧工事が行われていましたが、先月、完了しました。
被害を受けた50メートルのメインプールと飛び込みプールは16日から利用が再開されるということで、県スポーツ振興課の岩渕健一課長は「県内で現在使える50メートルプールはここにしかなく、多くの人に迷惑をかけた。また活用してほしい」と話していました。
一方、同じ運動公園内にあり、3年前の東京オリンピックではサッカーの会場となった宮城スタジアムでは、2階の観客席の基礎部分がおよそ30メートルにわたってたわむなどの被害が出て、今も復旧工事が続いています。
県によりますと、工事の完了はことし8月ごろを見込んでいるということですが、その後、別の工事が行われ、利用の再開は来年1月になる見通しだということです。

【JR東日本は新システム運用開始】
おととしの地震で東北新幹線は、福島駅と宮城県の白石蔵王駅の間を走行中だった車両が脱線したほか、架線やレールなどおよそ1000か所に被害が出て全線の運転再開までにおよそ1か月かかりました。
こうした中、JR東日本は地震計で地震を検知した後に新幹線を緊急停止させるシステムを改良し、先月9日から運用を開始しました。
新しいシステムでは、地震の初期微動から地震の規模をより早く推定し、それに応じた範囲を走っている新幹線を緊急停止させるということです。
JR東日本によりますと、過去に初期微動の検知で新幹線が緊急停止した13の地震で検証した結果、新しいシステムでは初期微動を検知してから送電を停止するまでの時間が平均で1.3秒となり、従来のシステムより2.6秒短縮できたということです。
これは時速320キロメートルで走行していた場合、従来よりおよそ230メートル手前で停止できるようになるということです。
東北新幹線や上越新幹線の沿線など管内にある135台の地震計を改修したということで、JRでは脱線などのリスクを減らすことができるとしています。