“アメリカで娘の心臓移植を” 5億円余募金集まり目標達成

重い心臓病の1歳の女の子がアメリカで心臓の移植手術を受けるために必要な費用について、支援団体は、目標としていた5億円余りの募金が集まったと12日、発表しました。
女の子は年明けにもアメリカへ渡る見通しです。

去年10月31日に生まれた東京・豊島区の佐藤葵ちゃん(1)は、生後間もなく心臓の壁に穴が空いているのが見つかり、2回の手術のあと、重い心不全になりました。
ことし6月には人工心臓の手術を受けましたが、感染症などのリスクが高く、一刻も早く心臓移植をする必要があることから、葵ちゃんの両親や支援団体はアメリカで手術を受けるため、11月14日から募金を呼びかけていました。
また、葵ちゃんの両親が東北大学出身ということもあり、母校の恩師や友人らが仙台市でも支援を呼びかけていました。
しかし、円安が急激に進んだため手術費や渡航費などが高騰し、必要な金額はおよそ5億3000万円にのぼっていましたが、支援団体によりますと、12日までに目標としていた金額を超えて集まったということです。
これで募金の受け付けは終了し、来年1月から2月ごろには葵ちゃんはアメリカへ渡航し、移植を待つ見通しだということです。
葵ちゃんの両親の佐藤昭一郎さん(41)と清香さん(38)は「当初は果てしなく遠いゴールに途方に暮れていましたが、葵の命をつなぐスタートラインに立つことができ、感謝の気持ちしかありません。みなさまに頂いた力で葵の命をつないでいきます」とコメントを出しました。

【両親「感謝でいっぱい」】
佐藤葵ちゃん(1)の心臓移植に必要な費用が集まったことを受けて、両親はオンラインで会見を開きました。
このなかで、父親の佐藤昭一郎さん(41)は「募金を呼びかける前は、本当に必要な金額が集まるのか不安もありましたが、多くの人から温かいことばや支援をいただき、驚きと感動と感謝でいっぱいです。移植を受けられるまでは感染症などのリスクもあり、心配な部分があるので、なるべく早くアメリカへ渡れるように準備を進めていきたいです」と話していました。
また、母親の清香さん(38)は「葵は最近、よく笑うようになり、好き嫌いやもっと自分にかまってほしいという気持ちがわかりやすくなっていて、成長を感じています。海外での移植については、渡航自体にリスクもある上、環境も変わるので、国内での移植を希望していましたが、現状はすぐには変わらないので、娘の命をつなぐためには今回の選択肢しかなかったと思います。移植費用が集まったことでスタートラインに立つことができたので、ここからは家族と医療者で全力で葵を支えていきたいです」と話していました。

【松野官房長官「国内での臓器移植 円滑実施を」】
松野官房長官は、午後の記者会見で「新型コロナの流行下でも臓器提供が円滑に行われるよう、厚生労働省で、状況に応じて、医療機関の間で医師などの派遣を行う体制の整備や、経験が豊富な施設から少ない施設に対するノウハウの共有など、施設間の連携体制の構築に取り組んできた」と説明しました。
その上で「今年度の15歳未満の臓器提供者数は、コロナ前の水準に向けて着実に回復してきており、引き続き、国内での臓器移植が円滑に進むよう取り組んでいきたい」と述べました。