“核のごみ” 住民投票前に寿都町で勉強会 調査の行方は

いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定に向けた「文献調査」が行われている後志の寿都町で、次の段階の「概要調査」に進むかどうかを問う住民投票を前に、町が主催する住民を対象とした勉強会が始まりました。非公開で開かれた24日夜の初めての勉強会で、片岡町長が文献調査に応募した経緯などを説明したということです。

2020年から寿都町と神恵内村で始まった文献調査は、次の段階の「概要調査」に進めるとした報告書の原案がことし2月に示され、現在、国の審議会で報告書のとりまとめに向けた議論が進められています。
寿都町では、「概要調査」に進むかどうかを住民投票で問うことにしていて、これを前に、住民を対象とした勉強会を来月3日にかけて町内7地区で開催する予定で、24日夜、最初の勉強会が東部の地区で非公開で開かれました。
参加した住民によりますと、勉強会には地区の住民8人と地区外からの住民4人のあわせて12人が参加し、冒頭、片岡春雄町長が文献調査に応募した経緯について「この事業は国としてどうしても解決をしなければならない案件で、そこに一石を投じたいとの思いと、寿都町の将来のまちづくりを考えたときに、調査に応募することが町にとって糧になると判断した」などと説明したということです。
また、町の職員が、▼地層処分事業の全体の流れや▼核燃料サイクルの仕組み、▼すでに処分地を決めている北欧のスウェーデンと日本との違いなどについて説明したということです。
住民からは、「これでは勉強会ではなく説明会だ」といった声があがったほか、説明された資料に関する質問が出されたということです。
勉強会は来月3日にかけて開かれることになっていて、町内で概要調査に向けた議論が加速するか注目されます。

【NUMOは不参加】
今回の勉強会について、町は「住民が落ち着いて学べる環境をつくる」として報道機関に非公開としました。
また、公平性を担保するとして、処分地の選定事業を担うNUMO=原子力発電環境整備機構の職員を招かず、NUMOは調査に関する資料を町に提供しました。
24日夜、NUMOの坂本隆理事は、「我々も事業者として説明する役割はあると思っていたが、町でやるということで、それ以上、関与は出来ない」と話していました。
また、資源エネルギー庁の下堀友数課長は、「NUMOがいると推進ありきじゃないかと言われることもあるが、冷静に中立的に議論したいということが寿都町の思いだと思うので、運営の仕方についてコメントする立場ではない」と述べたうえで、今後、道外でも文献調査が進められることを念頭に、「対話の場とは別に住民説明会があってもいいと思うし、いろいろな形が当然あり得ると思うので、寿都町での取り組みが今後の参考になるとは思う」と話していました。

【専門家「地域の住民がどのような反応するか注目」】
「核のごみ」の最終処分に関する国の審議会で長年、委員を務めている東京電機大学の寿楽浩太教授は、寿都町が住民対象の勉強会を開いたことについて、「繰り返し様々な機会を捉えて関係する情報が地域の皆さんに提供されることは非常に良いことだ」と述べました。
一方で、NUMOの職員を招かず寿都町が勉強会を開いたことについては、「NUMOと一線を画した形で勉強会を開くことはあっても良いが、寿都町自身が調査を受け入れ調査を行うことを支持する立場にあるため、話を進めている側が行う行事なのだという部分もどうしても出てきてしまう。調査に慎重、反対の意見を持っている方からすると本当に公平な進め方かという受け止めが出る可能性はある」と指摘しました。
そのうえで、「今回の勉強会がどのように評価されるかは、開く側の狙いと、町民がどういった場を求めているかがうまく合ってくるかどうかがポイントになり、どういった反応が地域の皆さんから示されるのか非常に注目されるところだ」と指摘しました。

【NUMO・エネ庁「文献調査報告書 夏めどにまとまる見込み」】
寿都町と同じく2020年から文献調査が行われている神恵内村では、24日夜、対話の場が開かれました。
この中で、NUMOと資源エネルギー庁の担当者は、寿都町と神恵内村での文献調査の見通しについて、▽この夏をめどに調査の報告書がまとまる見込みで、▽その後、年内をめどに、2つの町と村をはじめ、道内のすべての振興局で調査結果の説明会を開く見通しだと述べました。
説明会については、道などからの要望があればさらに開催場所が増える可能性があり、来年以降も開催する可能性もあるということです。