注目集まる埼玉県産いちご オリジナル品種の「あまりん」

いちごと言うと、栃木の「とちおとめ」や福岡の「あまおう」などが有名ですが、最近は埼玉県産のいちごに注目が集まっています。
特に「あまりん」という埼玉オリジナルの品種は、名前の通りの甘さが特徴でコンテストで最高の賞に選ばれるなど、知名度が上がっていて、このほど老舗洋菓子店が「あまりん」を使った特別なケーキを作りました。

「あまりん」は埼玉県農業技術研究センターが開発して、8年前に品種登録されたあと、埼玉県内の栽培面積はこの3年間で4倍に増えています。
名前の通りの強い甘みと鮮やかな赤い色が特徴です。
日本野菜ソムリエ協会が主催する「全国いちご選手権」では、埼玉県内の生産者が出品した「あまりん」が去年とことしの2年連続で最高金賞に選ばれました。
その「あまりん」を使った特別なショートケーキを、都内にある老舗洋菓子店が発売しました。
創業100周年を記念して伝統のレシピで作られたもので、生クリームや生地など材料にこだわったケーキのために選ばれたのが、埼玉県秩父市の農園で作られた「あまりん」でした。
パティシエの堀江靖彦さんは「見た目も真っ赤で非常にきれいで、甘さと酸味のバランスが取れたいちごです」と話していました。
このケーキに使われたいちごを生産したのは、秩父市の高野宏昭さんです。
タカ野さんの農園では、6年ほど前から本格的に「あまりん」の栽培を始めました。
「あまりん」はほかの品種と比べると収穫量が少ないものの、タカ野さんは農薬や化学肥料を最小限にしてワインの絞りかすなどを堆肥にした土作りに取り組み、品質にこだわったいちご作りを進めているといいます。
タカ野さんは「遠くからお客さんが来てくれるようになって場所が足りなくなってきました。収穫量が少ないのを面積でカバーしようとハウスを増やしてきました。色や形にもこだわった最高級のいちごを作りたいというのが私の思いです」と話していました。
「あまりん」は、熊谷市にある埼玉県農業技術研究センターの尾田秀樹さんが中心になって開発してきました。
県内には観光農園が多いことから、「埼玉ならではの特徴のあるいちごを楽しんでほしい」と、15年ほど前から開発に取り組んできました。
数多くの候補の中から絞り込むため、尾田さんは「1日に何キロになるか分からない、100粒とか200粒とかを毎日食べ続けていました」と話していました。
こうして開発されたのが「あまりん」のほか、豊かな香りが特徴の「かおりん」、そして、酸味が少なく甘みが強い「べにたま」の3つの品種です。
いずれも埼玉県内でしか作られておらず、「あまりん」と「かおりん」は主に観光農園や直売所で、「べにたま」はスーパーなどで販売され、人気を集めています。
埼玉産のいちごの人気が高まっていることについて、尾田さんは「品種の力はあるかもしれませんが、生産している農家の努力が非常大きいと感じます。埼玉産のいちごの存在があまり県民に知られていなかったので、農業に関わりのない人にも知ってもらえるようになったのは大きいと思います」と話していました。
埼玉県では1960年代にいちごの作付面積が全国1位だったこともありますが、現在は10位にも入りません。
いちご産地の知名度向上へ、生産者や開発者はより質の高いものを作ろうと努力を続けています。