越谷 浸水被害時の避難所開設に4時間以上 対策検討へ
予想を上回る局地的な大雨の際、住民の安全を確保する難しさが浮き彫りになりました。
先月、局地的な大雨で浸水被害が出た埼玉県越谷市では市内全域に避難指示を出しましたが、3分の1近い避難所では職員に指示をしてから開設に4時間以上かかっていたことがわかりました。
なかには周囲が冠水して移動が難しい状況になったところもあり、市は対策を検討するとともに急な大雨の場合は2階などへの垂直避難を呼びかけたいとしています。
埼玉県越谷市では先月2日から3日にかけ、24時間の降水量が260.5ミリと統計を取り始めてから最も多くなりました。
市内を流れる川で氾濫危険水位を超えたため、市は2日の午後10時すぎに職員に避難所の開設を指示し、午後11時36分に全域の16万世帯余りに避難指示を出し、避難所の開設を進めました。
しかし、開設した75か所のうち3分の1近い24か所では職員に指示してから4時間以上、避難指示から3時間以上開設にかかったということです。
このうち越谷市大杉にある老人福祉センター「くすのき荘」では開設したのは3日午前3時半すぎで職員に指示してから5時間、避難指示が出されてから4時間が過ぎていました。
2階や3階への避難を想定していたものの排水ができずに浸水する「内水氾濫」が起きていて避難所開設の30分後には床から5センチほどの高さまで浸水していました。
このほか、3か所の避難所は周囲の冠水が始まっていて開設をとりやめたということです。
避難所の開設に時間がかかった理由について市は深夜だったため交通手段も少なく市の外に住んでいた職員が集まるのに時間がかかったり職員は到着していても施設の鍵を持っている職員がなかなか到着しなかったりしたためだと説明しています。
越谷市の湊谷達也危機管理監は「避難する場所を見直しするなどの対策を進めたい。急な大雨の場合は建物の2階などへの垂直避難による安全確保も呼びかけていきたい」と話しています。
避難所の開設が遅れた越谷市の避難所「老人福祉センターくすのき荘」から200メートルほどの住宅に住む、田中明さんの住宅は床下まで浸水する被害が出ました。
水は玄関まで上がってきたということで、田中さんの家族が、3日午前11時ごろに撮影した映像では、自宅の庭や周辺の道路が水につかっている様子が確認できます。
この影響で、床下に収納していた家財道具が水につかったほか給湯器が故障し、家の前に止めてあった車も水につかったということです。
田中さんによりますと、過去の大雨では床上20センチまで浸水したこともあったといいます。
田中さんは「いざという時は2階に行けばいいと思っていましたが自宅もどうなるかわからないので、避難所も大事だと思います。ただ、途中には水が深くなるところがあるので、早め早めの避難が必要だと痛感しました」と話していました。
住民の避難行動が専門の静岡大学の牛山素行教授は、周囲の浸水が始まってから避難所に無理に向かうことはかえって危険で、建物の上の階など安全な場所に移動することは避難行動の一つだとしています。
その場合、建物が洪水に押し流される危険性がないことが重要で想定される浸水の深さよりも高い場所かや孤立状態になっても水がある程度ひくまでとどまることができる備えがあるかも、大切だといいます。
一方、越谷市のように住宅地が低い場所にあり、全域で浸水のおそれがあるような場合は避難所の1階部分などが水につかること自体はありえるとしています。
牛山教授は「地域の人たちは浸水が想定される場所に住んでいることを認識するべきで、どう避難するか、一人一人が考えていく必要がある」と話しています。