玄海町議会特別委「文献調査」受け入れについての請願を審査

いわゆる「核のごみ」の処分地の選定に向けた「文献調査」の受け入れについて請願書が提出された佐賀県玄海町の町議会で請願を審査する特別委員会が開かれ、処分地の選定を担う国の認可法人の担当者は、現在決まっている北海道の2つの自治体以外での調査に向けて理解を求めました。

原子力発電に伴って出る高レベル放射性廃棄物いわゆる「核のごみ」は長期間強い放射線を出し続けることから、地下300メートルより深くに埋めて最終処分を行うことが法律で決まっていて、処分地の選定に向けた調査は3段階で行われます。

玄海町では今月、町内の旅館組合と飲食業組合それに防災対策協議会の3団体から、第1段階の「文献調査」への応募を町に働きかけるよう求める請願書が町議会に提出されました。

これを受けて町議会では17日、請願を審査するための特別委員会が開かれ、資源エネルギー庁や処分地の選定を担う国の認可法人NUMO=原子力発電環境整備機構の担当者4人が参考人として出席しました。

この中でNUMOの担当者は「文献調査」が全国で北海道の2つの自治体でしか行われていないことを踏まえ、「できるだけ多くの地点で実施したい」と述べて理解を求めました。

一方、2017年に政府が作成した、「科学的特性マップ」で玄海町の多くが「好ましくない特性があると推定される地域」に分類されたことについては「色分けした範囲全域で鉱物資源の存在が確認されているわけではなく、最終処分地としての適否を判断するためにも文献調査が必要だ」と述べました。

議会では今月25日に再び特別委員会を開き、今月中にも本会議で議決する見通しだということです。

NUMOによりますと、原発が立地する自治体で処分地の調査に向けた請願が出されるのは、NUMOが把握する範囲で、初めてだということです。

特別委員会終了後、玄海町の脇山伸太郎町長が報道陣の取材に応じ、「請願については今後の議論を見守っていくとしか言えない。今後、そのときが来れば自分の判断を示さざるをえないというのは、自分のなかに覚悟を決めているが、まだ、どう判断するかは決めていない」と話していました。

特別委員会に参考人として出席した資源エネルギー庁の下堀友数放射性廃棄物対策課長は、委員会終了後、報道陣に「熱心に議論いただき、『理解を広める努力をすべき』との指摘もうけた。原発の立地自治体であるにも関わらず、関心を持ってもらうことは国としてはありがたい。議会での審議を見守り、追加説明の要望があればしっかり対応したい」と述べました。

また、NUMO=原子力発電環境整備機構の田川和幸専務理事は「議員のエネルギーへの問題意識の高さを感じた。日本社会全体の課題であり理解を広めるため、積極的に対話活動を国と連携しながら進めたい」と話しました。

17日の特別委員会には、原発に反対する市民グループも傍聴におとずれました。

玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会の石丸初美代表は、「放射能の影響についての議論が欠けている。『核のごみ』の問題は、自分たちも含め皆で考えるべきだとは思っているが、そもそも、何万年も管理が必要な危険な廃棄物の発生を止めないままに処分地の議論を進めることは筋が通っていない」と話していました。

【請願書とは】
玄海町では、玄海町旅館組合と玄海町飲食業組合それに玄海町防災対策協議会の3団体がそれぞれ、町議会に対して「核のごみ」の処分地の選定に向けた第1段階にあたる「文献調査」への応募を求める請願書を提出しています。

このうち、飲食業組合は、玄海原発1号機と2号機が廃炉となったことで客の多くを占める原発関連の作業員が減少したことや、その後の新型コロナによる影響で売り上げが大幅に落ち込んでいるとして、厳しい現状を説明しています。

その上で、「最終処分場に関しては新たな産業振興策における『選択肢のひとつ』と考えている」として、文献調査への応募を求めています。

また旅館組合も、旅館の利用者の多くは原発関連の作業員が占めており、廃炉の影響を受けているとしています。

その上で処分地の選定が進まない状況を踏まえ、「高レベル放射性廃棄物を発生させる自治体の責務として、文献調査に応募し、課題解決に苦労している国に協力すべきである」としています。

一方、防災対策協議会は地震がどこで発生するかわからない中にあって、玄海原発が立地している場所が安全かどうかを確かめるため、文献調査で地質状況を調べるべきだとしています。