オスプレイ 駐屯地工事中止求める仮処分 地裁が退ける決定

陸上自衛隊の輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する計画に伴い、空港に隣接する土地で進む駐屯地の建設工事を中止するよう漁業者などが求めた仮処分の申し立てについて、佐賀地方裁判所は21日、退ける決定を出しました。

防衛省は、千葉県の陸上自衛隊木更津駐屯地に暫定配備されているオスプレイ14機と追加で調達する3機を佐賀空港に配備する計画で、去年6月から空港の西側で新しい駐屯地の建設工事を進めています。

これに反対する佐賀市の漁業者など4人は、駐屯地の建設工事が進む土地は4人を含む地権者全員の同意がないまま、登記上の名義人になっている漁協が国に売却したもので、所有権は移っていないなどと主張し、工事の中止を求める仮処分を去年8月、佐賀地方裁判所に申し立てました。

これに対し、国は土地は漁協が単独で所有していたもので、漁協から所有権を有効に取得したなどと反論し、申し立てを退けるよう求めていました。

これについて、佐賀地方裁判所の三井教匡裁判長は21日、漁業者側の申し立てを退ける決定を出しました。

【弁護団 即時抗告の方針】
仮処分の決定を受けて申し立てを行った漁業者や弁護団が、21日午後、佐賀市で集会を開き、決定を不服として福岡高等裁判所に即時抗告する方針を示しました。

佐賀市内で開かれた集会には、支援者およそ100人が集まりました。

集会で申立人の1人、古賀初次さんは「残念、無念のひと言。私たちにはちゃんと所有権がある。土地を売らないと言ってるのに、不法な埋め立てを認める裁判所は国の回し者としか言えない。これからも闘うつもりだ」と述べました。

代理人の東島浩幸弁護士は「裁判所は漁業者などが土地の所有権を取得したことを証明できていないと結論として言っている。また、過去に数回墜落事故を起こしているオスプレイが、生命・身体を侵害することも証明されていないなどと、通常の国民・市民の感覚とは全く遊離していて、国が言っていることをそのままなぞった判断で到底受け入れることができない」と話しました。

そのうえで、21日の決定を不服として今後、福岡高等裁判所に即時抗告する方針を示しました。

【九州防衛局「国の主張が認められた」】
仮処分の決定を受けて、九州防衛局は「今般の決定は国の主張が認められたものと受け止めています」とコメントしています。

【佐賀市長がコメント】
仮処分の決定を受けて、駐屯地の工事が進む佐賀市の坂井市長は「本日の決定は裁判所において慎重に審理した上での判断であると受け止めている。現在、本訴が係争中のため、市としては引き続き、今後の推移を注視したいと考えている」とコメントを出しました。

【漁協「裁判を注視していきたい」】
仮処分の決定を受けて、国に土地を売却した佐賀県有明海漁協の西久保敏組合長は「国として適切に対応されるものと考えている。漁協としては引き続き、裁判を注視していきたい」というコメントを出しました。

【知事「裁判の内容を注視したい」】
仮処分の決定を受けて、自衛隊のオスプレイ配備計画が進む佐賀空港を運営する佐賀県の山口知事は「差し止めの仮処分は却下だったということだが、裁判は続くというので引き続き、内容を注視したい」と述べました。

【争点は土地の所有権】
今回の仮処分の争点は、駐屯地が建設される土地の所有権です。

漁業者側の申し立て書などによりますと、駐屯地の建設工事が進む空港西側の土地は、1972年にかけて食糧増産の目的で国の事業として干拓が行われた土地で、干拓前は漁業者がのりの養殖などの漁業を営んでいました。

漁業者は漁業補償と引き換えに国造干拓を受け入れ、1963年に漁業補償を結んだ際に、希望者に干拓農地を配分する申し合わせがありましたが、その後、この土地は県によって空港建設予定地に選定されました。

国から干拓地の払い下げを受けた県は、1988年に漁協との間で土地の売買契約を結びました。

この際、登記の名義は、煩雑な登記手続きなどを避けるため便宜上「漁協」としたものの、漁業者などは1963年の申し合わせに基づいて、土地の所有権は実質的には個々の漁業者にあると主張しています。

佐賀空港へのオスプレイの配備計画が明らかになって以降、去年5月、漁業者など地権者全員でつくる協議会は、総会で土地を売却するかどうかの投票を行い、3分の2以上の賛成を得たとして国への土地の売却を決定しました。

こうした経緯を基に、土地の名義人である県有明海漁協と防衛省は正式に売買契約を結びましたが、漁業者など4人は、土地は地権者が共有していて売却するには全員の同意が必要だと主張しました。

これに対し国側は、1988年の売買は漁協が持っていた「共同漁業権」の補償として行われたもので、土地の所有権を取得したのは漁協だったと反論しています。