諫早湾干拓訴訟 “開門命令は無効”確定 「開けない」で決着

26年前、長崎県諫早湾の干拓事業で閉めきられた堤防の排水門を開けるかどうかについて、最高裁判所は、開ける立場の佐賀県などの漁業者側の上告を退ける決定をし、国に開門を命じた確定判決の効力を無効とする判断が確定しました。
この排水門については、「開門命令」と「開門禁止」という相反する確定判決がありましたが、「開けない」方向で事実上、決着した形です。

諫早湾の干拓事業では、1997年に国が堤防を閉めきったあと、▽漁業に深刻な被害が出たとして、佐賀県などの漁業者が起こした裁判で開門を命じる判決が確定した一方、▽干拓地の農業者が起こした別の裁判では、開門を禁止する判断が確定していました。

司法の判断がねじれた状態となる中、排水門を開けない立場の国は、開門を命じた確定判決の効力をなくすよう求めていました。

この裁判で福岡高等裁判所は去年、「開門を命じた当時と比べ、漁業への影響が減る一方、排水門を開けた場合の防災や干拓地の農業への支障は増大している」などとして国の主張を認め、開門を命じた確定判決の効力を無効とする判断を示しました。

判決を不服として佐賀県などの漁業者側が上告していましたが、最高裁判所第3小法廷の長嶺安政裁判長は2日までに退ける決定をし、国の勝訴が確定しました。

開門を命じた確定判決の効力はなくなり、司法判断は「開けない」方向で事実上、統一された形となりました。

【漁業者「怒りを覚える」】
最高裁判所が漁業者側の上告を退ける決定をしたことについて、佐賀県太良町の漁業者平方宣清さんは「なぜこのような決定になったのか、不信と不満がある。司法が私たちの声をしっかりと受け止めてくれず、このような判断をしたことに怒りを覚える」と話しました。

そのうえで「これは漁業者だけでなく経済に関わる大きな問題だ。今後も国と話し合いの場を設け、『開門してくれ』という私たちの気持ちを受け止めて判断を示してもらいたい」と話していました。

【佐賀県 山口知事「釈然としない気持ち」】
最高裁判所が佐賀県などの漁業者側の上告を退ける決定をしたことについて、佐賀県の山口知事は「和解の席につかなった国の主張が認められたことに関しては釈然としない気持ちだ」と述べました。

そのうえで「われわれは一貫して排水門の開門調査も含めて有明海の環境変化の原因究明をすべきだと訴えてきたので、非常に残念に思う」と話していました。

【漁協の組合長は】
今回の最高裁の決定を受けて、佐賀県有明海漁協の西久保敏組合長は「平成22年の確定判決は有明海の再生につながる一筋の光明で、心のよりどころでもありましたが、漁業者の思いとは違う方向に行ってしまったことは残念です。有明海の再生のためには、開門調査を含めて環境変化の原因を一刻も早く明らかにし、実効性のある対策を打つことが重要と考えています」とコメントしました。