大津へ避難し旅館で働くウクライナ人女性 夢に向け新たな一歩

ロシアによるウクライナへの侵攻が始まって、8月で1年半がたちました。
大津市へ避難し温泉旅館で働くウクライナ人の女性は、終わりの見えない戦闘に不安を抱えながらも、ある夢に向かって新たな一歩を踏み出そうとしています。

ことし3月にウクライナから大津市に避難してきたマリナ・コワルディナさん(33)は5月から大津市・雄琴の温泉旅館で働いています。
マリナさんが担当する仕事は客室のチェックや客の出迎え、レストランでのサービスなどで、英語と勉強中の日本語で宿泊客や同僚とやり取りします。
子どものころに見たアニメがきっかけで日本に興味を持ったというマリナさんは、大学などで日本語を学んだあと卒業後も勉強を続け、日本語能力試験で日常会話がある程度理解できるレベルとされる「N3」に合格しました。
日本の文化に憧れを抱き、いつの日か日本を訪れることを夢見ていたマリナさん。
しかし、去年2月に突然始まった侵攻で生活は一変しました。
マリナさんが暮らしていたのはロシアと国境を接する東部のハルキウ州で、すぐに激戦地となりました。
マリナさんは「自宅から1.5キロから2キロほど先が戦場になり、私の住んでいた地域は大きな被害を受けました。働くことができなくなり、日常は失われ、すべてが悪くなりました。なんとか生き残って生活しなければならず、日本語を勉強する時間も意欲もなかったです」と当時を振り返っています。
そうした中、SNSを通じて大津市の企業が避難民を受け入れているのを知り、日本へ避難しました。
日本で自立した生活を送ることを希望していたマリナさんに就職先として手を挙げたのが、現在働いている旅館の専務でした。
高野健一郎専務は「避難民というのを外しても、全然ちゅうちょなくオーケーを出しました。昨今のインバウンド事情を考えると、マリナさんの語学力に期待できる部分がありました」と話しています。
マリナさんは海外から旅館を訪れる客に接することも多く、外国人に日本の魅力を伝える旅館の仕事にやりがいを感じています。
そしていま、新たな目標ができました。
翻訳、特に通訳の仕事について、日本の文化や伝統を海外の人に紹介し、旅行がいい思い出になるように頑張りたいと考えています。
10月からは日本語学校に入学し、日本語能力試験で最難関の「N1」の合格を目指します。
ウクライナには今も家族や友人が残り、不安は尽きませんが、それでも遠い日本の地で夢に向かって新たな一歩を踏み出そうとしています。
マリナさんは「私が日本に来たのは戦争の終わりをただ待つだけでなく、自分を成長させ、可能性を広げるためです。日本語学校でレベルの高いコースを受講できることになり、とても楽しみです」と笑顔を見せていました。