大阪地検 「闇バイト」への指示役被告に懲役15年を求刑

いわゆる「闇バイト」で集められた実行役に現場で指示を出し、高級腕時計を奪ったなどとして強盗などの罪に問われている30歳の被告の裁判で、検察は「実行役は被告の指示がなくては動けず、主導的な役割を果たした」として、懲役15年を求刑しました。

大阪・鶴見区の自営業、伊藤一輝被告(30)は、去年3月、大津市の質店のガラス扉にブロックを投げつけて侵入しようとしたとして、建造物侵入未遂の罪に問われているほか、去年5月には、京都市の時計販売店で高級腕時計41本、およそ6900万円相当を奪ったとして、強盗の罪に問われています。
このうち京都市の事件では、「ルフィ」を名乗って指示を出したとしてフィリピンを拠点にした特殊詐欺グループの幹部が逮捕・起訴され、これまでの裁判で、伊藤被告は、大津市と京都市の事件について、「『ルフィ』という者の指示に従った」と述べ、起訴された内容を認めています。
大阪地方裁判所で開かれた28日の裁判で、検察は「『ルフィ』に従属的な立場だったとはいえ、実行役は、被告の指示がなくては動けず、主導的な役割を果たした。その後も闇バイトを使って犯行を繰り返すたびに、首謀者へと立場を変えていった」などとして、懲役15年を求刑しました。
一方、弁護側は「たまたま現場での指示役を割りふられただけであり、独自に指示を出したものではない」などと主張しました。
判決は、9月1日に言い渡される予定です。

【少年院にいる少年の5人に1人 「闇バイト」経験】
この「闇バイト」について、NHKが専門家とともに全国の少年院を対象にアンケートを行ったところ、回答した少年のおよそ5人に1人が「『闇バイト』をした経験がある」と答えました。
「闇バイト」が少年たちに広がっている実態をうかがわせています。

NHKは、専門家とともに全国の少年院にいる少年を対象にアンケートを行い、26の少年院のあわせて587人から回答がありました。
この中で、「『闇バイト』をした経験があるか」尋ねたところ、「ある」と回答した少年はあわせて120人と、全体の20.4%、およそ5人に1人に上りました。
また、「闇バイト」を経験した少年のうち40%にあたる48人が「罪悪感が乏しくなる感覚がある」と回答していて。
理由については、▽「他人の指示を受けて行うから」、▽「誰でもできる簡単な内容だから」という回答が多くなっています。

【専門家は】
NHKとともに調査にあたった、少年非行の実態に詳しい龍谷大学矯正・保護総合センターの浜井浩一センター長は「『闇バイト』が少年たちに広がっている実態が明らかになり、驚かされた。『闇バイト』は、かなりの分業制になっていて、指示されて誰でもできる簡単なことだけをやっているので、全体像をイメージしにくく、罪悪感を持ちにくい傾向にある」と指摘しています。
その上で、『闇バイト』の広がりには、賃金の伸び悩みなど日本の社会や労働市場が関係しているとして、「アンケートでは、『時給のよい仕事』や『やりがい』があれば、『闇バイト』をやらなかったという回答が自由記述で複数あった。若者にとって、やりがいを感じながら、それなりの収入を得て生活できる社会、まっとうに働けば幸せになれる社会をどうつくっていくか、考える必要がある」と話しています。