米軍施設に外国軍が 課題は?

【米軍施設に外国軍が 課題は?】
アメリカ軍北部訓練場で、2024年3月、アメリカ海兵隊によるジャングルでの戦闘を想定した訓練プログラムにオランダ軍の兵士が視察目的で参加していたことが分かりました。

国内のアメリカ軍施設をアメリカ以外の外国の軍隊が使用することは日米安全保障条約で認められていませんが今回の目的は視察だとして国は問題ないという認識を示しています。

いったい何が起きているのか。
米軍担当の記者が取材しました。

(NHK沖縄放送局 宮原啓輔)

【北部訓練場にオランダ軍の姿が】
海兵隊や外務省によりますと、2024年3月、北部訓練場でジャングルでの戦闘を想定した訓練プログラムにオランダ軍の兵士3人が視察目的で参加したということです。

アメリカ軍のホームページでは海兵隊員とオランダ軍の兵士がロープを使って崖を降りたり通信機器を用いて連絡を取り合ったりしたと説明されています。

【米軍施設に別の外国部隊 それっていいの?】
日米安全保障条約では「アメリカ軍が日本国内において施設・区域を使用することを許される」と規定されています。つまり、アメリカ以外の外国の軍隊が使用することは認められていません。

一方、これについて政府は2016年の答弁で、「いかなる態様であっても日米安全保障条約で禁じられているものではなく、条約の範囲内のものであるか否かは個々の事案に即して判断されるべきものと考える」などとしています。

【外務省“問題なし”】
外務省はNHKの取材に対し「オランダ軍が北部訓練場にことし3月に来ていたことは把握しているがアメリカとオランダはそれぞれ『視察を行い訓練はしていない』と回答しており、訓練が行われた認識はない。日米地位協定によってアメリカ軍施設・区域の管理権はアメリカ側にあり、アメリカ軍の訓練に加わる以外は認められるケースがあり今回は、それに該当し問題があるという認識はない」としています。

【米軍の担当者は】
海兵隊は「オランダ軍の兵士は視察を行った。アメリカ軍の活動に
第3国の兵士が参加することは日米地位協定の中で認められていて
日米安全保障条約の義務に沿ったものだ」とコメントしています。

一方、アメリカ海兵隊が去年11月7日、北部訓練場の訓練を報道機関に公開した際、海兵隊の教官は「2022年に行われた北部訓練場の訓練プログラムにオランダ軍とイギリス軍、他国軍、アメリカ海兵隊、自衛隊も含めおよそ1万4000人が参加した」と説明していました。

【安全保障の専門家は】
安全保障が専門の沖縄国際大学の野添文彬准教授はアメリカ軍施設・区域の外国の軍隊の使用について次のように指摘しています。

(野添文彬 准教授)
「第3国のアメリカ以外のですね軍隊の軍人がまず日本の基地の中で訓練することは認められていないと言いつつも、一方で在日米軍基地の施設の中にアメリカ以外の外国の軍隊とか個人がさまざまな活動に参加するということは一概に否定するものじゃないということを答弁している。明確に第3国の軍人が基地の中で訓練することを禁止する条文がない以上、これは認めざるを得ないというのが、日本側の解釈になっているんだろう」

(野添文彬准教授)
「どうしても日本側は、アメリカ側に守ってもらっているという点から日米地位協定とか日米安保条約の問題は日本側がアメリカ側に対してちゃんとものを言えない。
そういう構造になっているというところに大きな問題があるんだろう」

【記者後説】。
北部訓練場はやんばるの国頭村と東村にまたがる広大な施設で、アメリカ軍はジャングル戦闘訓練センターと呼んでいます。海兵隊によりますとジャングルを想定したアメリカ軍の訓練施設は沖縄とハワイにしかありません。

野添准教授は「中国の軍事力の強化などを背景にアメリカが同盟国との協力を強化し、脅威となる国を抑止する方針を示していて、こういった中で沖縄のアメリカ軍施設などで同盟国の軍隊による視察や訓練が行われていると考えられる。オランダ軍にとってもロシアのウクライナ侵攻もありアメリカ側との連携を重視している可能性もある」と指摘しています。

私が参加した報道機関向けのワークショップでは海兵隊やほかの国の軍隊、自衛隊含めおよそ1万4000人が1年間に訓練に参加したとありましたが、視察目的が含まれている可能性もあります。

一方、外国の軍隊の在日アメリカ軍の訓練施設での活動について明確な判断基準はなく使用実態は明らかになっていません。

野添准教授は「あいまいなまま、訓練が繰り返される可能性があり負担が増える恐れがある」と指摘しています。

海兵隊はオランダやイギリスに加え他の国の軍隊も参加していると説明していた、どの国が使用しているのかも分かっていません。
まずは、使用実態を明らかにすべきだと思います。