「所有者不明土地」の実態と課題に迫る

【“所有者不明土地” その実態と課題に迫る】

持ち主がわかっていない土地、“所有者不明土地”は全国各地にあります。ただ沖縄ではこうした土地が生まれた経緯がほかの都道府県とは大きく異なるんです。その実態と課題について石川拳太朗記者が取材しました。

(NHK沖縄放送局記者 石川拳太朗)

【点在する“所有者不明土地”】
“所有者不明土地”は地価の高さが県内有数の那覇市真嘉比の住宅街や那覇市の商業施設が建ち並ぶエリアの一角、それに南風原町の住宅街のど真ん中など、さまざまな場所に点在しています。こうした所有者不明土地は県内にどれだけあるのか。県の担当者に聞きました。

(県管財課 山口栄祐主査)
「県内に27市町村あります。やはり一番集中してあるのが那覇市とか与那原町、西原町です」

こうした土地を離島も含め27の市町村が抱えています。面積はおよそ98万平方メートル、沖縄アリーナ37個分に相当します。

【背景には沖縄戦】
この問題の背景にあるのは、沖縄戦です。家族全員が犠牲になったり、土地の権利を記録した台帳が戦禍で失われたりしたほか、艦砲射撃で地形が変わったことで所有者がわからなくなったのです。

(県管財課 山口栄祐主査)
「戦後79年がたっていることもありますので、戦後すぐには所有者であるという証明ができた書類などをお持ちの方々もですね、いなくなっています。証明できるものがなくなっていくという難しさがあります」

【沖縄特有の事情が】
県は情報提供を求めていますが2015年を最後に、所有者を特定できたケースはありません。こうした土地をめぐってほかの都道府県との決定的な差があります。本土復帰に伴う特別措置法によって沖縄では県や自治体が所有者不明土地を管理することが義務づけられています。このため、定期的なパトロールや草刈りなどを担わなければなりません。

(県管財課 山口栄祐主査)
「県管理では1500筆近くある中を定期的にパトロールする必要があります。各地に点在した所有者不明土地をずっと管理していかないといけない。そのためには費用も人もかかります」

【改正民法の施行】
こうした中、改正民法が2023年施行され、所有者不明土地との関係性が裁判所に認められれば自治体や個人が土地を取得できるようになりました。この制度を県内で初めて活用した自治体に向かいました。那覇市から北西に60キロ離れた粟国村です。島の北部を中心に所有者不明土地がおよそ12万平方メートルあります。

(粟国村 新城研太課長補佐)
「法改正で用地取得が可能となったため工事を進めている段階です」

村は去年12月におよそ1000平方メートルを購入。この場所で製糖工場の宿舎の建設を進めています。

【活用難しいケースも】
しかし、“所有者不明土地”の中には、山の斜面や建物に挟まれた場所、それに拝所や墓が残されているなど活用が難しいケースも少なくありません。このような土地は今後も県や自治体が管理していく状況が続くとみられています。

【専門家は】
長年、沖縄の所有者不明土地の問題を研究してきた専門家は、根本的な解決には国が主導して対応することが必要だと指摘します。

(岡山商科大学法学部 比嘉正教授)
「管理体制がずっと続くことになります。ですから、そういう意味では、管理体制を維持すべきなのか、それともそれ以外の解決方法がないのか。戦争に起因する問題ですので、そういう意味では国の戦後処理問題の一環として解決策を探れないか、やはり一義的には国が対処すべきではないか」

【取材後記】
県は繰り返し国に対して沖縄の所有者不明土地の問題解決に向けた
法整備などを求めています。沖縄戦から79年となり、土地の所有者の特定がますます難しくなる中、早急な対応策が求められています。