文化芸術従事者の8割近く「ハラスメント行為をされた・見た」

那覇文化芸術劇場なはーとが文化・芸術分野に従事する人に行ったアンケート調査で、8割近くの人が「ハラスメント行為をされた」あるいは「見たことがある」と回答したことが分かりました。

このアンケート調査は、ことし1月から2月にかけて「那覇文化芸術劇場なはーと」が、県内を拠点に活動するアーティストなど文化や芸術に携わる117人を対象にインターネット上で行いました。

その結果、「ハラスメントにあたる行為をされた」、「見たことがある」と答えた人が8割近くに上ったということです。

内容について複数回答で尋ねたところ、パワーハラスメントが78人、アカデミックハラスメントが51人、セクシュアルハラスメントが49人でした。

具体的には、「2人きりの場所で長時間にわたり、怒りをぶつけられた」とか「留守中に家まで来られた」、「男性演出家が女性の俳優やスタッフに卑わいな言動を繰り返した」「お金のことを問い合わせただけで“金に汚い”とうわさを流された」といったものがあったということです。

那覇文化芸術劇場なはーとの林立騎企画制作グループ長は「収入が少なかったりあいまいな契約で不安定な状況に立たされたりしていることに加えてハラスメントを受けている、想像以上にひどい状況に驚いた。文化、芸能の担い手のための環境整備していきたい」と話していました。

【厳しい労働環境浮き彫りに 「契約」根づかない実態も】
調査では、アーティストなどの厳しい労働環境も浮き彫りになりました。

仕事上で経験したトラブルについて複数回答で尋ねたところ、「不当に低い報酬額の決定」が41人、「報酬支払いの遅延」が33人「一方的な仕事内容の変更」が30人などとなっています。

業務を受注する際に契約書を締結しているかについては、「いつもしている」が7%、「するときとしないときがある」が42%と、合計でも半数を下回っていました。

契約を結ばない理由については「契約書を交わす慣例がなく受発注側どちらにもその発想がない」が最も多かったほか、「面倒くさい人に認定されてしまう」とか「プロジェクトの流動性を阻害する可能性がある」など契約に伴う不利益を心配する声もありました。

調査を企画したメンバーの1人で県内で活動する写真家の上原沙也加さんは「契約がほとんど口約束で進んでしまったり、報酬の面でも芸術活動は好きなことをやっているから仕方ないというような空気感があらかじめあるように感じる」と話していました。

また、県出身で東京で活動する写真作家の寺田健人さんは「契約自体があいまいな状態で、“これもお願い”みたいな感じで次々と依頼がやってくる。これを断ると次の仕事がこないかもしれないなどと感じることがある」と話していました。