津波警報 沖縄県内各地で渋滞が発生 対策は?

今月3日の台湾付近を震源とする大地震で課題として浮かび上がったのは、避難する人たちの車による交通渋滞です。車社会の沖縄で緊急時にどのように対応すればよいのか、取材しました。

(NHK沖縄放送局 河合遼記者・石川拳太朗記者)


【高台での受け入れ態勢整備を】

津波警報が出た日。県内各地で交通渋滞が発生し、速やかな避難の妨げになっていました。

西原町に住む元警察官の新城格さんは防災士の資格を持ち、自治会の防災アドバイザーを務めています。津波警報が出たときは、海抜60メートルほどの自宅でテレビを見ていました。高台なので安心していたと言いますが、騒がしい音を聞いて外に出ると、普段とは異なる光景を目にしました。

(新城格さん)
「こちらからずっとむこうのほう家族連れだとか、1人の方もいたんですけれども、車がずーっと、渋滞して駐車しておりました」

平日は空きスペースのある結婚式場の駐車場も車でいっぱいになり、その前の道路も渋滞しました。付近の様子を見に行った新城さんが遭遇したのは、道路を逆走して上ってきた車でした。乗っていたのは体に障害のある人で、速やかに車を住宅街の安全な場所に誘導したと言います。

どうしても車を使わなければならない人たちの避難に影響が出ていたのではないかと指摘します。

(新城格さん)
「災害弱者の皆さんも逃げ遅れるというような典型的な事例になるだろうなと。大きな交通渋滞、それから、われさきにと駐車場に入り込む、その影響で大きな課題があると感じました」

津波警報が出た日のあと、新城さんは、結婚式場に対して、緊急時には支援が必要な人たちのために駐車スペースの確保を検討してほしいとお願いしました。

高台の地域では避難者の受け入れ態勢を整備する必要があると感じた新城さん。今後、自治会での検討課題にするということです。

(新城格さん)
「高台にある地域が津波には無縁だということではないんですね。やはり大きく影響を与えます。ですから、低地帯から避難してきた人たちの誘導だとか、支援だとか、こういうのも、大変大事なことなのかなと思いました」

【普天間基地周辺 垂直避難も】

海沿いの地域では、高台ではなく近くの津波一時避難ビルに駆け込んだ人もいました。

4000人が暮らす宜野湾市伊佐地区の自治会長、安良城かつみさんです。この地区の海抜は2メートルほどしかなく、避難訓練では周辺の建物など3か所を一時避難場所にしています。安良城さんはこのうちの1つ、公営住宅の11階に避難。周辺の道路は激しく混み合い、車はほとんど動かない状態になっていました。津波の到達予想は午前10時。わずか10分前まで渋滞の最後尾は海の目の前にありました。

実際に津波が来ていれば、甚大な被害が出ていたのではないか。安良城さんは、避難場所や避難のしかたについて、多くの住民に改めて知らせなければいけないと考えています。

(安良城かつみさん)
「本当に津波が来なかったのはいいんですけど、実際に来たときは本当に危険だなと思いました。命が大事という意識付けを自治会のほうでもやっていきたい」

避難する人たちの車によって発生した大渋滞。琉球大学の神谷准教授は、市の中心に横たわる普天間基地の存在に着目しています。

(琉球大学 神谷大介准教授)
「宜野湾市の場合は特に北側と南側にしか道がないですから、高台に避難しようと思うとふだんから混んでいるところがさらにひどくなる。そういった意味合いで基地があることは避難の障害になっているのは事実だと思います」

東日本大震災のあと宜野湾市はアメリカ軍と協定を結び、津波警報が出された際には普天間基地の中を通り抜けられるようになっています。しかし今回、国道やバイパスに加え、基地周辺の市道にまで渋滞は広がり、開放された基地のゲートや高台に車両で向かうのが難しい状況になりました。

神谷准教授はこうした地域や都市部では渋滞の発生を防ぐため原則として徒歩で避難すること、そして場合によっては「垂直避難」するなど、まずは身の安全を守ることを徹底すべきだと指摘しています。

(琉球大学 神谷大介准教授)
「こういった地域の方が避難するのは徒歩で高台に避難するというのがまず原則で、それが難しい方に関してはこのあたりは高い建物がありますのでそちらのほうに避難する。そのほうが個人としても早く避難できますし社会全体としても避難遅れになる方が少なくなる」

体が不自由な人や高齢者の避難など車での避難が必要な場合もあります。神谷准教授は、誰と誰が避難の際に車を必要としているのか、また相乗りするメンバーなどご近所どうしなどでルールを決めておくのも、だれひとり取り残さないよう避難をするのに効果的だと話していました。