那覇市の保育施設死亡事故 報告書の内容と課題は

【保育死亡事故で報告書】

2022年7月30日、那覇市にあった認可外保育施設で一時預かりを利用していた生後3か月の男の赤ちゃんが心肺停止の状態で病院に運ばれ、その後、亡くなりました。

事故のあと、市は学者や医師などによる検証委員会を設置し、3月25日、再発防止に向けた23項目の提言を盛り込んだ報告書が市側に提出されました。この報告書について、河合遼記者が解説します。

【河合遼記者の解説】
すでにこの施設は閉園していますが、保護者や元職員などへ聞き取りを行った報告書によりますと、亡くなった男児は、この認可外保育施設の利用は2回目で、健康状態に問題もなかったということで、預けてから亡くなるまでのおよそ4時間に何が起きていたのか、見ていきます。

午前8時に男児を受け入れたあと、午前10時半ごろに、職員がミルクを与えようとしても、うまく飲めず、その異変を園長に伝えましたが、十分な確認が行われなかったということです。

その後、男児をベッドでうつ伏せの状態などで寝かしますが、定期的な呼吸の確認は実施されませんでした。

保護者が迎えに来た時には、職員によって顔のうっ血や、体温の低下も確認されていました。

この時も職員が園長に異変を伝えましたが、施設側は保護者への速やかな報告や救急要請を行いませんでした。

報告書では、再発防止策として、保育施設には、安全な保育環境を確保することや緊急時の対応体制の明確化、そして職員への研修などが求められるとしています。

一方、男児の死因はわかっていません。警察は施設の対応と死亡との因果関係も含め、慎重に調べています。結論が出るには一定の時間がかかるとみられています。

報告書の提言のうち、最も多いのが市に対してで、14項目にのぼります。提言の4項目までは、指導や立ち入り調査にかかわるもので、体制を強化して、実効性のある指導や監督が行えるよう提言しています。

事故の半年ほど前に行った立ち入り調査で、命にかかわる10項目の重要な問題点が見つかったのに、十分かつ迅速に改善を図っていなかったと指摘しています。

これについて、報告書は市の担当者の人員不足が原因の1つだとしています。

また、亡くなった男児の保護者と十分に意思疎通がとれず、配慮が足らなかったとしています。さらに、検証委員会の設置に4か月以上かかったことも問題視しています。

委員会は、当時の園長に体調不良を理由に調査を断られ、直接聞き取りができておらず、事実関係の把握が十分にはできていません。

国に対する提言は2項目で、検証委員会には元園長に話を聞く法令上の調査権限がなく、情報収集に限界があるとして、十分な権限を与えることなどを提言しています。

報告書について、保育の専門家は、当時の園長から話を聞けていないことを問題視し、安全管理がずさんな施設が運営を続けられていたことに対する市の責任は重いと強調しています。

駒沢女子大学保育科の猪熊弘子教授は「こういう施設がまだあるということがものすごいショックでした。そのままにして運営させていたのは、那覇市の責任ですから、それをきちんと指摘するべきではないか」と指摘しています。

その上で、猪熊弘子教授は「抜き打ちの立ち入り調査をやるとしっかり書くべきだったと思います。認可外保育所での事故が多かったさいたま市では、抜き打ちの調査を始め、事故は圧倒的に減っています」と話していました。

【編集後記】
取材を続ける中で、同じような事故はもう二度と起きてほしくないという思いを強くしています。ただ、2023年12月には、東京の認可外保育施設で生後4か月の赤ちゃんが亡くなるなど、保育の事故はあとを絶ちません。今回示された提言に保育施設、そして行政の関係者がどう向き合い、実行していくのか、本気度が問われていると思います。