「自己ベスト」追求 車いすマラソン 喜納翼選手

「自己ベスト」追求 車いすマラソン 喜納翼選手


パリパラリンピックの開幕まで半年を切りました。うるま市出身の喜納翼選手(33)は競技用車いすで42.195キロを走る車いすマラソンで出場を目指す喜納翼選手。去年の世界ランキングは8位でした。「自己ベスト更新」を掲げて沖縄でトレーニングに取り組む喜納選手を取材しました。

(沖縄放送局 市川可奈子カメラマン)

【スピードと持久力さらに】
               
(喜納翼選手)
「車いすマラソンは走る喜びを教えてくれた」

うるま市出身の喜納翼選手です。初めて出場した東京パラリンピックでは7位に入賞しました。小学4年生でバスケットボールを始め、沖縄県の代表にも選ばれましたが大学生のときに事故で脊髄を損傷。車いすマラソンを始めたのは、23歳のときでした。その6年後には、当時の世界記録まで8秒と迫る日本記録を出すまでに力をつけました。パリパラリンピックまで半年。出場選手は過去2年間の世界ランキングをもとに、上位の中から決められます。喜納選手は、常に最高の走りを目指してきた姿勢がパリにもつながると考えています。

(喜納選手)
「代表になりたいという思いもやっぱりあるんですけれども、でもそれ以前に、今シーズンで記録をまた更新していきたい。そこも含めた上で、しっかりトレーニングが積める1年にしていきたい」

去年の大分国際車いすマラソン。海外勢のスピードについていくことができず、4位に終わりました。タイムも1時間44分49秒と伸びず、自己ベストよりも9分遅れました。課題はスピードと持久力だと感じた喜納選手。トップスピードを上げ、さらに、ハイペースで走り続ける体力をつけるため走り込みを重ねています。

(喜納選手)
「ハイペースというのをうまくできなかったのが、昨シーズンだったかなという印象があるので、もう課題としては一番、こうトップスピードを上げたりだとかスピードを出せるような体をもう1度しっかりつくっていくというところ」

重点的に取り組んでいるのが、男子選手のスピードに食らいついて走る練習です。自身のトップスピードをさらに高めます。

【試行錯誤で車いすも進化】

体作りだけではありません。相棒の車いすも進化しました。先月、届いた新しい前輪は、愛知県の自転車店に依頼し、5年がかりで制作してもらったものです。推進力を上げるために前側に重心がほしいという喜納選手のこだわりに応えて中心部分がこれまでより重くなっています。何度も試作品をつくってもらってはやりとりを重ね、試行錯誤の結果、完成したといいます。後輪も120グラム重いものに変えました。ハイペースで走るときにスピードが落ちにくくするためです。

(喜納選手)
「道具の面は私自身でもどうしようもないところですし知識もないところだったので。これで少しでも
速くなる可能性まだあるのかなと思って。それが数年越しでいま、形になってきているので、これからがまた楽しみですね」

トラックでの練習に加えて週に一度は、実戦を意識したロードでの練習にも取り組んでいます。この日は、新しい車輪の感触も確かめました。

(喜納選手)
「フラット(平地を)走っていると結構転がりが感じられて、引っ張られてる感じあったりしたので
悪くないなという印象はあったりしました」

【支えてくれる人たちのために】
最高の走りを目指して、努力を重ねる喜納選手。そこには支えてくれた周囲の人への思いがあります。

(喜納選手)
「支えてくれる人がいるからこそ走れるっていうのもありますし、私自身が良い記録を出すことは、そういった支えてくれている、いろんな人たちへの感謝の思いも含めその人たちの結果を残すためのレースというような感覚があります。2024年こそは、記録を更新したいです。自己ベストを更新していきたい」

【市川カメラマンの取材後記】

1秒でも速く走るために、トレーニングも道具選びも妥協しない姿勢が印象的でした。そして、喜納選手は競技以外にも学校での講演活動に力を入れています。努力を積み重ねていく大切さや障害者への理解を深めてほしいという思いから、子どもたちに自身の経験を伝えています。そんな喜納選手、今シーズン初めてのレースとなる、あさって日曜日の東京マラソンに出場します。本人も納得できる、いい走りを期待したいです。