地域の“ゆいまーる”で届ける朝ごはん

忙しい朝でもしっかり朝ごはんを食べてほしいと、地域を巻き込んで活動する男性が南城市にいます。その取り組みを取材しました。

(NHK沖縄 高田和加子記者)

【忙しい朝を助けたい】

南城市佐敷の調理場で、てきぱきと調理されていく、新鮮な野菜。調理している5人の平均年齢は68歳。ほとんどが定年退職した人たちです。料理教室では、ありません。子どもたちの朝ごはんを作っています。

(あかゆらの会・比嘉幸雄さん)
「子どもたちに朝ごはんを提供します。彼らの楽しそうな会話と笑顔を見るのが、楽しみで作っています」

なぜ、朝ごはんなのか?この取り組みのリーダー、比嘉幸雄さんに聞くと、きっかけは登校時の見守り活動で見かける慌ただしい親の姿だったと話します。

(比嘉さん)
「お父さん、お母さんが忙しいということがわかりました。朝忙しいんですよ。朝ごはん食べないで学校に行って午前中つらいだろうなと」

【食材は?:地域の畑から】

子どもたちに、栄養たっぷりの朝ごはんを食べてもらいたい。活動を始めた比嘉さんが協力を求めたのが、地域の仲間です。そのうちの1人、南城市玉城で趣味で野菜を育てている嶺井良一さんには、無料で食材を分けてもらっています。

(嶺井さん)
「無農薬です」
 
食べきれないほど収穫できる自慢の畑でできた大きな青パパイアも子どもたちに届けます。

(嶺井さん)
「子どもたちが健康で、朝食もちゃんと食べて学校に行けるということは非常に自分もうれしいですし、子どもたちを見ていると非常に自分も元気になります」

【調理は?:地域の料理専門家やボランティアで】

収穫の次は、仕込みです。決して調理が得意ではない比嘉さん。琉球料理に詳しい地元の女性が、助っ人としてメニューや調理指導をしてくれています。去年秋から始めたこの取り組み。調味料や調理器具などの調達には県の助成金も活用しています。

(比嘉さん)
「塩を小さじ2杯ぐらい、手でボンって。そんなに濃くはないけど味が出てるでしょ?」
(ボランティアの元保育士)
「おいしい。野菜の味」
(元保育士)
「もともと保育士だから子ども大好きなんですよ、どんな子でもいいから、明るく元気にいてほしい」

(調理指導する女性)
「愛情かけてあげれば、おいしく食べてくれるんじゃないかと」

“子どもたちの笑顔を見たい”朝ごはん作りをきっかけに地域の新しいつながりができています。

【朝ごはんの日】
そして迎えた朝ごはん会、当日。まだ暗いうちから準備を始め、急ピッチで40人分を用意します。青パパイアは佃煮にして、いなりずしに入れました。メニューは、とれたての野菜を使ったスープにサラダ、そしておにぎり。月桃の葉で彩りを添え、愛情たっぷりの朝ごはんが完成しました。

(子どもたち)
「おはようございます」

朝7時すぎ、子どもたちがやってきました。この日は、育ち盛りの子どもたち23人が食べに来ました。もりもり食べて、登校前に元気満タンです。

(比嘉さん)
「もう食べ終わったの?」

(男子児童)
「野菜が好きだから、ドレッシングかけた野菜がおいしいから好きです」

(女子児童)
「作ってくれた方には、忙しい中、作ってくれてありがとうって思います」

子どもたちを地域で見守れる仕組みを作っていきたい。朝ごはん会がそのきっかけとなればと考えています。

(比嘉さん)
「地域のお年寄りがどこの家の子も、自分の家の子も一緒に面倒みてくれたが、そういうところが今はない。昔あった、“ゆいまーる”の気持ちで、月に2回ですけど家庭的な雰囲気を作れればなと思う」
【高田記者の取材後記】
“子どもたちに元気を”ということで始まった取り組みですが、手伝う地元の人たちも子どもたちから元気をもらって結束も強まるというよい循環ができているように感じました。また、朝ご飯会を取材した日には比嘉さんたちのノウハウを学ぼうと隣の地区の住民も手伝いに来ていて、取り組みが今後広がっていく勢いを感じました。