沖縄の「食」魅力に変化が… 飲食店や専門家に聞いた

沖縄は人口に占める飲食店の数が全国で最も多くなっています。観光客にとって沖縄の食は魅力のひとつですが、いまその状況に変化が出てきています。

(NHK沖縄放送局キャスター 内原早紀子)


【観光客はどう考える】

観光客でにぎわう国際通りで、訪れていた人たちに沖縄の食について聞いてみると…。

(大阪からの観光客)
「もう沖縄そば食べました」
(東京からの観光客たち)
「さっきタコライスを食べました」「私もタコスを食べました」
(埼玉からの観光客たち)
「テビチというんですかね。ボリューム満点の」「すごくおいしかったです」

一方でこんな声も聞かれました。

(愛知からの観光客)
「食ではなく、自然を目的に行くことが多いかもしれない。どちらかというと自然ですね。私たちの所にはないので」

観光には欠かせない「食」の充実。ことし気になる調査結果が発表されました。旅行会社が毎年行っている「都道府県魅力度ランキング」で、これまで常に3位以内をキープしていた沖縄が、なんと9位になったのです。

大幅に順位を下げた理由は「食」の項目でした。なんと12位まで下がる結果です。

【飽きがくるのでは】

こうした観光客の変化を実感している店があります。国際通りで居酒屋を経営する店では、民謡歌手による本格的なショーを売りにしています。そして「にんじんしりしり」に「ゴーヤーチャンプルー」そして「ソーメンチャンプルー」など、定番の沖縄料理を出しています。

那覇市で店を開いて15年。9割以上がリピート客となった今、この店の宮里拓樹さんは、定番ではない沖縄料理の需要も高まっていると感じています。

(宮里拓樹さん)
「やはり何回もきているとどうしても飽きというところがあるのかな。THE定番の沖縄料理のみで構成するよりも、メニューに沖縄料理じゃないものも少し入れて欲しいという要望があるんです」

そこで沖縄料理のメニューだけでなく肉料理としてスペアリブを新たに追加。さらに和食の料理人に依頼し、定番の沖縄料理の味つけに、和風の味を加えることにしたのです。

他の店では出せない味を模索するこの取り組み。お客からの反応は上々だといいます。

(お客)
「フーチャンプルーがおいしかったです。すごくあっさりしていていっぱい食べられる感じがしました」
「味がおいしく感じてよかったです。沖縄の魅力にすごくなると思います」

(宮里拓樹さん)
「だいたいの観光関連ランキングでトップに入ってくる沖縄だからこそ、食の部分をちゃんと入れていけるように上位をもう一回とれるように、飲食業界の本当の小さな1店舗ですけど頑張っていきたい」

【地元ならではの店が減っている】

この調査結果や沖縄の現状について、経済に詳しい沖縄国際大学の宮城和宏教授に聞きました。宮城さんは「ウチナーンチュとしては納得できない。前は7位だったわけですから、せめてそれくらいは欲しい」とした上で、地元ならではの店が減っていることも原因ではないかと話しました。

(沖縄国際大学 宮城和宏教授)
「コロナ禍でつぶれた店がある一方で、本土から県外資本が入ってきていると思うんですけど、県外資本や全国チェーンとかの店が増えてくると、本土から来た観光客からすると『あまり変わらないんじゃないかな』と。そういうところが食べ物に関するランキングが落ちた理由なのかなと考えます」

宮城さんはその上で、地元の店が厳しい競争にさらされているという現状も指摘します。

(沖縄国際大学 宮城和宏教授)
「沖縄は零細中小企業の店だらけなので資本力がないんですよね。投資してどんどん差別化していくのは余力がたぶん無い。地元の飲食店が、地元の人も満足させながら観光客にも満足できるような違いを作り出していけるのかが課題だと思います」

【取材後記】

沖縄は、開業率と廃業率の割合がどちらも全国平均を上回っていて、新規に参入しやすいものの、すぐ撤退する店も多くなっています。宮城さんは、循環が早すぎることは、産業として安定しないことにもつながると話していました。

取材を通して、沖縄料理自体の魅力が無くなったという訳ではなく、その魅力を感じられる場所が減ってきていることなのかもしれないと感じました。その最前線を担う、お店の経営環境が厳しいというのも気になるところです。今後の動向も取材していきたいと思います。