“レベル4”沖縄では初 久米島でドローンの配送実験

先週久米島で、ドローンでモノを配送する実証実験が行われました。「レベル4」と呼ばれ、ドローンを住宅街など人がいる上空で、操縦する人などが目視できない範囲を飛行させます。この実験が沖縄で行われたのは初めてで、久米島町は事業化に期待を寄せています。

(NHK沖縄放送局記者 河合遼)


【ドローンで総菜を配送】

今月8日に久米島町で行われた、ドローンを使った配送の実証実験。運んだのはスーパーの惣菜です。箱も含めて1キロ以内に収まっているかを確認し、ドローンに搭載します。

準備が整うとドローンは離陸。高度45メートルまで上昇し、直線距離でおよそ2キロ離れた場所まで運びます。飛行するルートは目視できない範囲ですが、事前にプログラムされています。操縦士はドローンから送られてくる映像で、異常が無いか監視します。

住宅街の上空も飛行しながら、およそ5分後、目的地に到着。待ち受けていたボランティアが荷物を受け取り、近くの家まで届けました。

実証実験に参加した地元の人たちは。

「交通の便が不便に感じるところもあるので、あれば助かります。ただ、音も大きいというのが不便かなと思いました。重さも1キロまでじゃないですか。できたらお米とか水とか運べるぐらいの荷物発送だったらいいのかな」

「お薬なども運べると聞きました。だんだん年を取っていくので、出かけられない時はぜひ買い物を助けていただきたい」

実証実験を行ったANAホールディングスドローン事業グループの信田光寿リーダーは「本当にスタートを切ったことを改めて実感しました。宿題をいただけたかなというところで、ありがたいなという気持ちです」と話していました。

【人口減少と高齢化への危機感から】

今回の実験は、高度な飛行を伴う「レベル4」と呼ばれるもので、沖縄では初めて行われました。去年12月に解禁され、住宅街など人がいる上空で、目視できない範囲を飛行できるようになりました。

一方で、厳格に安全性を担保するため、機体の認証制度や操縦士の国家資格が設けられています。安全基準に適合していると認証された機体を使い、試験や検査に合格した人が操縦することが条件となっています。

今回久米島町が実験に協力したのは、人口減少と高齢化への危機感からでした。町の人口は、ことし9月末でおよそ7300人と、20年前と比較して、およそ2000人減少。65歳以上の割合は32%あまりと高齢化も進んでいます。

地域の商店も減少しています。地元のスーパーは、週3日移動販売車を走らせ巡回していますが、運転できない高齢者などは、買い物に行くにも不自由な状態となっています。人手不足などで町内の流通網をいつまで維持できるかという課題もあり、町ではドローンによる配送に期待を寄せています。

(久米島町 桃原秀雄町長)
「いますぐ久米島町が抱えている課題が解決できるものではないのですが、これがうまくできれば、人口が減少している他の離島とかの手助けにもなるのかなと。人手不足なども結構ありますよね。募集してもなかなか人が集まらないとか。そういったものもひとつ手助けをできるんじゃないかなと」

【実証実験は全国2例目まだ課題も】

「レベル4」は、解禁から1年近くになりますが、実証実験は今回が全国で2例目となっています。安全性を確保するため操縦士の養成なども必要で、参入企業も少なく、実際にドローンが物流の場で活躍するには、まだ時間がかかりそうです。

ANAホールディングスドローン事業グループの信田光寿リーダーは「ドローンだからこそフィットするようなユースケース(活用事例)を探してそこに当て込んでいく。いつでもどこにいても、手軽に物を届けたり受け取ったりすることができる。そういう当たり前の世界を作っていきたいと思っています」と話します。

そして久米島町は今後、新しいものも積極的に取り入れたいとしています。

(久米島町 桃原秀雄町長)
「民間とかの皆さんが実証実験をやりたいというのは、積極的に取り入れたいという思いはありますね。それが町民のためだし、これからのまち作りにも役立つということで、できるだけ協力していきたい」