首里城正殿2度目の復元へ “レジェンド” 宮大工の思い

4年前の火災で焼失した首里城正殿の再建工事が始まってから11月3日で1年です。この再建工事には県内の宮大工も関わっていて、なかには30年あまり前の「平成の復元」に携わった人もいます。2度目の復元にかける思いを聞きました。

(NHK沖縄放送局記者 上地依理子)


【“レジェンド”と呼ばれる宮大工】

宮大工の外間義和さん(81)は、首里城正殿の再建工事に携わっているなかで最年長の職人です。仲間たちから「レジェンド」と呼ばれ親しまれています。

正殿の再建工事では、くぎを使わず木材に穴や切り込みをほって組み立てる伝統的な工法が用いられています。木材を組み合わせる部分は主に手作業で整え、0.5ミリ単位での正確さが求められます。

外間さんは「0.5ミリの線は引けないんですよね。だから手の感覚で穴をほる」と話します。

【一夜にして失われた集大成】

外間さんは30年あまり前、沖縄戦で焼失した正殿の復元にも関わり、当時も木材の加工を担当しました。この「平成の復元」は、宮大工としての人生をかけた仕事でした。

(外間義和さん)
「長い間夢でしたからね、首里城本殿は。それはもう喜んで参加させてもらいました。できたときには、みんな泣いていましたからね」

そうした、宮大工たちの技術の集大成だった首里城正殿でしたが、4年前の火災で一夜にして失われてしまったのです。

(外間義和さん)
「翌朝この首里を1日中車で回ったことがありますね。何か落ち着かなくて。寂しいというか、なんとなく回っていないといけない感じで。友だちとも話はできなかったですね。涙で…」

外間さんは、こう話してことばを詰まらせました。

【再び首里城の復元に】

首里城正殿の再建工事は去年始まりました。外間さんは引退し視力も衰えていましたが、かつてともに働いた棟梁の呼びかけで、再び首里城の復元に携わることになりました。

(外間義和さん)
「復元に立ち会うというか、社長はじめみなさんに声をかけていただいて、二度もできるというのは本当にうれしいですね」

「平成の復元」の経験と首里城再建への思い。いま外間さんのような人材が求められている背景には、さまざまな事情があります。

外間さんと同じように、前回に続いて今回も再建工事に携わることになった西武彦さん。今回は御差床(うさすか)や天井額木(てんじょうがくぎ)と呼ばれる、玉座やまわりの部分の再建を担当します。県内には宮大工が少なく、経験を積む機会も限られているのが現状で、今回の再建工事で、ベテランが若手とともに働くことは、技術を伝えるためにもいい機会だと話します。

(西武彦さん)
「体で覚える仕事だから。何回も何回も積み重ねていって初めて1人でできる世界。首里城でやっているような。ああいうできる大工さんは、外間さんとかそういう人たちが現役でやっているうちに、どんどん一緒に手元に置いてもらって一緒にやっていけばね、どんどん人材が広がっていきますからね」

【新たな首里城正殿と技術を後世に】

外間さんは現在、30人あまりの宮大工たちとともに作業にあたっています。若い世代と一緒に働くことは、新たなやりがいにつながっていると話します。現場に戻ってきた81歳のレジェンドは、新たな首里城正殿と宮大工の技術を後世に残そうとしています。

(外間義和さん)
「若い人たちがやってくれれば万全じゃないですか。本人たちが習いたいということならば、できるだけのことは教えたいと思いますよ。平成の場合はお祭り的な雰囲気で、今回の場合はやっぱり県民からの応援がたくさんありますね。1つ1つの作業を大切にしながら仕上げていきたいですね」

この外間さんが関わっている骨組み工事は年内に終わる予定で、正殿は3年後の完成を目指して作業が進められるということです。