「人間国宝」に祝嶺恭子さんと大湾清之さんの2人が認定へ

国の重要無形文化財の保持者、いわゆる「人間国宝」に首里の織物の祝嶺恭子さんと、琉球古典音楽の大湾清之さんが認定されることになりました。

国の文化審議会は21日、祝嶺恭子さん(86)と大湾清之さん(76)を含む12人について、人間国宝に認定するよう文部科学大臣に答申しました。

那覇市出身の祝嶺さんは、伝統的な首里の織物を制作する卓越した技だけでなく、ドイツの博物館に所蔵されている琉球王国時代の染織物の調査を精力的に行い、その成果を自身の創作へと発展的に展開させ、後進の指導・育成にも尽力していることが高く評価されました。

首里の織物は琉球王国時代に育まれた伝統的な染織技法で、中国や東南アジア諸国から影響を受けながらも首里を中心に独自の発展を遂げ、王族や士族の衣服として着用されてきました。

1つの地域に伝承される染織技法としては、多様性と洗練度においてほかに類例を見ない特徴を持ち、歴史上、芸術上、価値が高いとされています。

人間国宝に認定されることを知ったときの心境について祝嶺さんは「うれしさより不安が大きく、2、3日眠れなかった」と語りました。

そのうえで「沖縄はたくさんの織物があると言われながら、沖縄戦で焼け、技法を教える人もおらず、自分で調査して学ぶしかなかった。ベルリンで首里の織物を見たときは『あなたたち、よく頑張りましたね』と、人に会うような気持ちで1点1点を見ました。織物の経験があれば図案を見て再現できるので、図案は私の宝物でもあるし、ゆくゆくは沖縄の人たちの宝物になるかもしれません。先人が積み上げてきたことをつなげていく使命があると思っています」と話していました。

読谷村出身の大湾さんは、三線演奏家の父のもとで幼い頃から沖縄の伝統音楽に親しみながら育ちました。

昭和41年には、琉球古典音楽安富祖流の宮里春行さんに師事し、演奏家として研さんに励んできました。

その後、自身も多くの舞台に出演しながら、琉球古典音楽の理論的研究にも取り組み、その研究成果に基づいて安富祖流で伝承が途絶えていた「仲節」などの復曲を行うなど、伝統的な技法を高度に体現していることが高く評価されました。

また、平成18年から24年まで県立芸術大学で広く後進の指導にあたり、琉球古典音楽の振興や発展に貢献してきました。

大湾さんは「心の準備もしておらず、慎んでお受けしますと答えるので精いっぱいでした」と認定されることを知ったときの心境を振り返りました。

そのうえで「認定されるということは自分が今までやってきたことが保存をして継承していくだけの価値があると認められたということだと思っています。今後も責任を持って、使命感をもってきちんと保存しできるだけの価値のあるものに高めていって、次の世代の人にも伝えていきたいと思います」と話していました。

県内で、沖縄の芸能や工芸技術で人間国宝に認定されるのはこれで17人になります。

国の重要無形文化財の保持者、いわゆる「人間国宝」に祝嶺恭子さんと大湾清之さんが認定されたことについて、玉城知事は「両氏の永年の活動と努力、たゆまぬ研さんのたまものであり、県民を代表して、深い敬意を表するとともに心からお祝い申し上げる。沖縄の伝統文化の独自性が評価され、県民に大きな誇りと自信を与えるものであり、大変喜ばしく思っている」などとコメントしています。