沖縄県内の企業でも DXデータ活用で「稼ぐ力」を蓄える

最近よく聞く「DX」ということば。「D」はデジタル、「X」はトランスフォーメーションを略したものです。なぜトランスフォーメーションが「X」なのかというと、「トランス」には交差する、向こう側に越えていくという意味があるからです。

デジタル技術やデータを使って、社会や暮らしがより便利になるように変革しようと全国的に導入が進められる中、県内で始まっている企業の取り組みを取材しました。
(NHK沖縄放送局記者 西銘むつみ)

【ビッグデータ活用で営業戦略】

「景色」「天気」「アクティビティー」。

南城市にある温泉などを兼ね備えたホテルの利用者が、SNS上に投稿したことばです。このホテルの総支配人は「特徴的なもの、出現頻度の高いものを抽出して可視化しています」と話し、ビッグデータを活用して営業戦略を立てていると明かしました。

背景にあるのは、燃料価格の高騰などで厳しくなっている経営環境です。温泉の料金値上げに踏み切る中、利用者の満足度を上げるため、データを活用することにしたのです。

行政が公開している観光客数などのオープンデータに、独自に蓄積したデータを加味。地元の利用者と観光客の割合を分析し、サービスの区別化を図りました。

さらに、ホテルの建物やアクティビティーなどの写真を撮り直し、ホームページをリニューアルする作業を行っています。参考にしたのは、施設の利用者がSNSに投稿したいわゆる“インスタ映え”する画像です。利用者はコロナ禍前に比べ130%近くに。売り上げはおよそ145%に伸びたといいます。

(ユインチホテル南城 白附潤一郎総支配人)
「沖縄は観光じゃないですか。観光がこれから復活していくために、観光客がどのような行動をとっているかという分析が本当に必要だと思う。そういうビッグデータの活用とか、もっともっと必要になってくるでしょうし」

【沖縄県も企業のDXを後押し】

沖縄県も企業のDXを後押ししようと取り組み始めています。

多くの企業の悩みは、データの入手方法です。国や県、市町村などが公開しているオープンデータは別々のサイトにあるため、情報収集に手間がかかるのです。

県が主催した事例報告会に参加した企業の担当者は「デ−タの活用が弊社ではあまりできていないところがあったので、今後生かしていけるように勉強しに来ました」と話しました。

県は必要なデータをまとまった形で提供したり助言したりする事業を開始。年間8600万円の予算で5つの企業を支援し、事業は5年間続ける方針です。

【分析を深め新たな顧客開拓を】

県からの支援で情報の分析を深め、新たな顧客の開拓に乗り出した企業があります。

県内で20店舗を展開するスーパーでは、若い世代の顧客が取り込めていないのではないかと感じていました。そこで、会員カードやアプリの登録状況から、顧客の年齢層を分析。50歳から74歳が53.6%、20歳から40歳が25%であることが裏付けられました。

この分析結果を踏まえ、店内に新たなコーナーを設置。分量を増やした精肉を割安な価格で販売し、1世帯あたりの人数が多い子育て世代を取り込もうと考えています。

(フレッシュプラザユニオン赤道店 崎山昌秀店長)
「やはりデータを見ることで具体的にどのタイミングでどれくらい売れるかとか、品ぞろえできるかというところが大事なので。今まで感覚的に体感でやっていたものが実際に確実に実績として見えてくる浮かび上がってくるので、販売促進の取り組みには大きく有用かなと考えております」

【稼ぐ力を蓄える】

コロナ禍を経て、求められている新たな取り組み。県は、DXを推進して、企業に「稼ぐ力」を蓄えてもらいたいと期待しています。

全国最低水準の所得や子どもの貧困など経済的な課題が山積する中、「稼ぐ力」を高めることで解決につなげていきたいとしています。

(県ITイノベーション推進課 仲吉朝尚副参事)
「身近な中小企業の皆さんがいろいろ取り組んでいる事例を見て、私にもできるかもしれないという形で、横展開が広がっていければ、それが県全体の事業者のボトムアップにつながる」