さわる絵本に込めた思い

目の不自由な子どもたちが手でさわって楽しめる絵本“さわる絵本”を長年、制作しているボランティア団体の人たちを宮城杏里キャスターが取材しました。

布で立体的に表現されたにんじん。手で触って、形がわかるようになっています。「さわる絵本」を制作している那覇市のボランティア団体です。活動を始めて42年、これまでに作った作品は119点にのぼります。団体の代表を務める西園朝香さんです。活動に参加したきっかけは、団体を立ち上げた女性との出会いでした。中村文さんです。戦争で弟が視力を失ったことから沖縄盲学校の教諭となり、亡くなる直前まで絵本づくりに取り組んでいたといいます。

西園さんは「中村さんは『指が目の代わりになるから、触ってイメージを広げる』と話していて、素材選びに結構時間かけたりしていました。絵本作りが生きがいということをいつもおっしゃってたんですよね」と振り返っています。

120冊目は「ねぇおそらのあれなあに?」。七夕に合わせて星空をテーマにしました。登場するのはきつねや人間の親子。夜空に輝く星の存在を子どもに伝えるという内容です。ストーリーだけでなく、立体的に作った登場人物の説明も点字で行っています。大きさによって明るさが異なることを知ってもらおうと、大きい星はシールで、小さい星はアクリル絵の具で表現しました。

西園さんは「アクリル絵の具の上にドットして、その上から凹凸が出るようにボンドを塗りました」と話していました。

この絵本を通じて、星をイメージできるようになってほしいと考えているという西園さんは次のように話していました。

「お母さんとか先生とか一緒に触って読みながら、その子なりにイメージしてもらって、次のお話とか歌の中であの時の星ってあれだったなって自分の記憶の中っていうかイメージがでてきたらいいかなっていう。喜んでもらえたらいいなと思います」。

7月11日、沖縄盲学校で贈呈式が行われました。生徒たちは積極的に触って、絵本の世界を楽しんでいました。小さな子どもたちも興味津々です。幼稚部の女の子を絵本を手に取って「すごい」と話していました。小学5年生の男子児童は「手作りで作ってくれたのって愛を感じる」と感想を述べました。

西園さんは「感動しました。作りがいがありました。すべての人の上に星があるっていうのを伝えたいなっていう思いがあって作った本なので、星みたいに触れないものだけれども、感じとってくれた生徒さんもいてとってもなんか励みになりましたね」と話していました。

「絵本をきっかけに想像力を育んでいってほしい」と、西園さんたちはこれからも「さわる絵本」を作っていきます。

西園さんたちの団体では高齢化が進み、参加者は少なくなっているということで、興味があればぜひ活動に参加してほしいと話していました。問い合わせ先の「沖縄点字図書館さわる絵本部」の電話番号は、098−866‐0222です。