石垣島に陸上自衛隊の「石垣駐屯地」開設 南西諸島の防衛強化
防衛省は16日、沖縄県の石垣島に陸上自衛隊の新たな部隊を発足させ、「石垣駐屯地」を開設しました。
国は南西諸島の防衛を強化するとして離島への自衛隊配備を進めていて、沖縄では与那国島、宮古島に続く動きとなります。
16日午前6時半ごろ、石垣島の中央部に位置する新たな駐屯地では、自衛隊員が正門に掲げられた「石垣駐屯地」と書かれた看板の覆いを外しました。
午前8時15分には、敷地内で国旗が掲揚される様子が確認されました。
石垣島への陸上自衛隊の配備は、南西諸島での防衛態勢の強化の一環として与那国島や宮古島に続くもので、隊員およそ570人、車両およそ200台が配備されています。
部隊の発足を受けて、陸上自衛隊の幹部らは16日、石垣市役所を訪れ、中山市長に駐屯地の開設を報告しました。
これに対し中山市長は「住民と融和を図りながら、しっかりと部隊を運営してほしい」と述べました。
面談のあと、石垣駐屯地のトップにあたる司令に着任した井上雄一朗1等陸佐は報道陣に対し「隊員が一致団結し、島と住民を守る断固たる決意で教育訓練に励んでいきます」と話しました。
一方、駐屯地の前では自衛隊の配備に反対する住民グループなどが集まり、抗議活動が行われていました。
住民の賛否がわかれるなか、今月22日には防衛省による住民説明会が行われる予定です。
【石垣市長 共同訓練否定せず】。
陸上自衛隊の石垣駐屯地が開設したことについて、石垣市の中山義隆市長は「石垣島は最後になったが、これで、鹿児島県の奄美以南の南西諸島の防衛の形が整ったことになる。住民との協調、相互理解が必要だと思うので、オープンにできる情報はオープンにして互いの信頼関係を深めてもらいたい」と述べました。
一方、駐屯地の開設を機に、「反撃能力」を行使するための「スタンド・オフ・ミサイル」が将来的に石垣市に配備されるのではという懸念について、中山市長は「現時点では、防衛省とはそういった話はしていない。全国の駐屯地などが対象になると思うが、まずは説明を受けて内容を聞いてから判断したい」と述べ、賛否の姿勢は示しませんでした。
また今後、石垣島で日米共同訓練の打診があった場合の対応については「共同訓練自体は否定しないが、例えば、島の海岸を利用しての上陸訓練を提示された場合には、住民の理解が得られないと思うので、やめてもらいたいと思っている。場面、場面で判断していきたい」と述べ、訓練の内容によって受け入れの可否を判断する考えを示しました。
【玉城知事 十分な住民合意ない】。
陸上自衛隊による石垣駐屯地の開設にあわせて、玉城知事は15日、コメントを発表しました。
「政府に対して、地元の理解と協力が得られるよう丁寧に説明を行い、配備スケジュールありきで物事を進めることがないよう求めてきたところだが、現状は必ずしも十分に住民合意が得られているとは言い難い状況だ」としています。
その上で「施設の安全性や反撃能力の配備の有無、住民生活への影響など丁寧に説明し、地元の方々の懸念に答えていただきたい。また地元に与える影響が大きい自衛隊の運用については県に速やかに情報を提供するとともに、必要な協議をしていただきたい」としています。
【吉田陸幕長 抑止力を高める】。
沖縄県の石垣島に陸上自衛隊が新たな部隊を発足させ、「石垣駐屯地」を開設したことについて、陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長は16日の記者会見で、「南西地域における部隊の空白地域を解消して、抑止力を高めるとともに、各種事態が起きたときの迅速な初動対応を可能とする。引き続き南西諸島の防衛態勢の強化を着実に図っていきたい」と述べました。
新たな部隊配備をめぐって有事の際に攻撃の対象になるという懸念が、地元の住民などから出ていることについては、「石垣駐屯地への部隊配備は力による現状変更を許容しないという意思を示すことになり、抑止力や対処力を高めるもので日本に対する攻撃が行われる可能性は低下すると認識している」と述べました。
また、石垣島でアメリカ軍との共同訓練を行う可能性については、「現時点では、具体的な計画はない。一方で、南西地域全体においてさまざまな日米の連携を深めていく必要性はある。共同訓練などを行う際には、地元の皆さまの理解をしっかりと得ながら行っていきたい」と述べました。