消防防災ヘリコプター導入へ 県 新年度予算案に関連費用
県は災害時の救助活動などにあたる「消防防災ヘリコプター」の導入に向けて、機体の調達や基地の整備にかかる費用などを新年度の予算案に盛り込む方針を固めました。
これまで沖縄県には全国の都道府県で唯一、消防防災ヘリコプターがなく、救助などが必要な際は自衛隊や警察、海上保安庁に出動を依頼してきましたが、各機関の業務が優先されるため迅速に対応できないケースも起きていました。
こうした事態を解消するため、県は「消防防災ヘリコプター」の令和7年度の導入に向けた整備推進事業費、1億7900万円を新年度予算案に盛り込む方針を固めました。
このうち1億300万円は、ヘリコプターの基地となる「航空センター」を中城村にある県消防学校の敷地に整備するための設計などにかかる費用だということです。
また導入する機体について、県内すべての市町村と県でつくる協議会は石垣島まで給油せずに飛行できる中型機とすることにしていて、調達などにかかる費用、20億8600万円を今後の支出を決めておく「債務負担行為」としてあらかじめ計上する方針です。
ただ、導入後の運用費の負担や隊員の訓練などについては、一部の自治体との間で調整が続けられています。
【導入のきっかけは大宜味村の事故】
消防防災ヘリコプターの導入に向けた県と市町村の話し合いは平成29年度に始まりましたが、そのきっかけの一つと言われているのが、その前の年に大宜味村で起きた事故です。
地元の消防の救助活動の記録によりますと、この年の7月、沢登りの人気スポットとして知られる「ター滝」の上流で男性が岩場から滑落し、頭などにけがをして動けなくなりました。
首の骨折などが懸念され、担架で固定して搬送する必要がありましたが、車道までの道のりは急斜面が続いて足場が悪く搬送が困難なことから、大宜味村は県を通じて自衛隊にヘリコプターの派遣を要請しました。
しかし、自衛隊のヘリは派遣されませんでした。
当時、大宜味村の消防関係者が県に提出した要請文には「自衛隊から県に災害派遣に当たらないため、派遣できないと連絡があった」と記されています。
このため、男性は担架に乗せてレスキュー用のロープなどの資機材を使って陸路で5時間かけて救急車が待機する駐車場まで運ばれ、途中、意識は低下するなど容態が悪化したということです。
当時、村長として現場で対応し、その後、県に対して消防防災ヘリコプターの導入を求めてきた宮城功光さんは「命に別状なくよかったが、搬送に時間がかかり、かなり大きな負担をかけた。消防防災ヘリコプターが導入されると、救助しやすくなるだけではなく搬送される時間が圧倒的に短くなる。人の命を助けるためにはどうしても消防防災ヘリコプターが必要となると思う」と話していました。