瀬戸内海国立公園指定90年 “攻める”広報紙を発行

瀬戸内海国立公園の指定からことしで90年です。
公園に広く関心を持ってもらおうと、スポーツ新聞によく似た見出しや、写真が目を引く広報紙が発行されています。

広報紙をつくるのは、岡山市にある環境省の中国四国地方環境事務所です。
広報紙はスポーツ新聞に敬意を示してインパクトのある見出しや写真を大胆に配置したデザインが目を引き、タイトルも環境事務所の略称から「中四環スポ」とこだわっています。
去年5月以降、これまで6号がつくられ、環境事務所が参加する地域のイベントで配られました。
取材から紙面のレイアウトまで一手に引き受けるのが、古川佳奈子さんです。
かつて5年間、グラフィックデザイナーとして働いていた経験を生かし、この広報紙の発行を提案しました。
古川さんは、「国がつくるものは“堅い”ものが多いと思い、自分の好きなスポーツ紙に見立てて目立たせようと考えた。それを見て話題にしたり、実際にイベントのブースを訪れたりしてくれる人がいると狙いどおりだと感じる」と話します。
第1号には、瀬戸内海に面した「ボートレース児島」に着想を得て、競艇の着順予想図を紙面に取り入れました。
香川県の寒霞渓や広島県の鞆の浦を抑えて、「本命は鷲羽山」とユーモアを交えて紹介します。
また、去年8月の第2号では玉野市の渋川マリン水族館で展示されている白なまこを取り上げ「激レア発生確率10万分の1」とあおってみました。
そして、去年12月の第3号では倉敷市の六口島にある国の天然記念物「象岩」を紹介する記事を載せまるで動物園にいるゾウが海にいるかのような写真を配置し「ビックリしたぞう」とだじゃれをタイトルにしました。
また、「アカミミガメ・アメリカザリガニをすてちゃあおえん」とか、「イノシシに餌をあげないでぇ」など環境保護の取り組みを“一行広告”風にして呼びかけました。
中国四国地方環境事務所は、これまで自然保護に傾きがちだった国の管理のしかたを改め、観光客を呼び込んで地域の活性化につなげようという観点からの政策に力を入れていて、その一環として、古川さんの提案を採用したということです。
環境事務所の坂口芳輝所長は「最初見たときは攻めているなと思った。このような分野は関心を持ってもらうところからなので、さすがにこれはまずいというものがない限り、チェックをしてOKを出している」と話していました。
古川さんは、「瀬戸内海国立公園には世界に誇れる風景があるにもかかわらず、地元の人の知名度が追いついていない。紙面が魅力に気づくきっかけになれば」と話していました。

【瀬戸内海国立公園とは】
岡山県と香川県の間の「備讃瀬戸」を中心に、現在11府県にまたがる瀬戸内海国立公園は、昭和9年、全国で初めて指定された3つの国立公園のうちのひとつです。
海域を含めると90万ヘクタールを超え、34ある国立公園のなかで面積は最大となっています。
穏やかな海に連なるおよそ3000の島々の多島美と、江戸時代には「北前船」が来航するなど港町として栄えた歴史があり、今も自然と人々の暮らしが共存しているのが特徴です。
県内では、岡山市・倉敷市・玉野市・備前市・瀬戸内市・笠岡市・浅口市の7つの自治体の沿岸部や、島を中心としたエリアが国立公園に指定されています。
国・県・市と、ボランティア団体などの民間の人たちが施設の維持や登山道の整備、それに海岸の清掃などにあたっています。
中国四国地方環境事務所によりますと、現在は倉敷市と玉野市にまたがる王子が岳を訪れる観光客のイノシシへの餌やりのほか、ペットボトルやプラスチックの破片といった海ごみ問題などが課題で、官民が連携して解決に取り組んでいます。