伊原木知事後援会 虚偽記載の政治資金収支報告書を訂正せず

政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたとして、会計責任者らが略式命令を受けた伊原木知事の後援会が、虚偽と指摘された記載について、去年までの収支報告書を訂正していないことが分かりました。
後援会はNHKの取材に対し「準備が整いしだい訂正したい」とコメントしています。

伊原木知事の後援会「いばらぎ隆太後援会」をめぐっては、寄付や借入金、それに借入金の返済の事実がないにもかかわらず、それが存在すると虚偽の記載をしたとして、会計責任者と事務担当者の2人が政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、ことし10月、いずれも罰金100万円の略式命令を受けました。
県選挙管理委員会が公表している去年までの3年分の政治資金収支報告書をNHKが調べたところ、虚偽と指摘された借入金残高などの記載を、後援会が訂正していないことが分かりました。
また一連の問題を受けて、伊原木知事はことし9月の記者会見で、後援会の会計責任者を解任すると説明していましたが、2か月以上たった今も解任していないことも分かりました。
「いばらぎ隆太後援会」はNHKの取材に対し「現在、後任の会計責任者の選定や、コンプライアンスの徹底を図るための外部の専門家によるチェック体制の構築など準備を進めている。収支報告書は準備が整いしだい訂正したい」とコメントしています。

【神戸学院大・上脇教授“あまりにも無責任”】
政治資金規正法の専門家で「いばらぎ隆太後援会」の関係者らを検察に告発していた、神戸学院大学の上脇博之教授はNHKの取材に対し「ひと言で言うと、あまりにも無責任だ。本当に説明責任を果たす気であれば、一日も早く政治資金規正法に基づいて真実を収支報告書に書くべきだ」と話しています。
また伊原木知事については「今回の件は1年2年の話ではなく、長年違法な行為がずっと続けられていた。そのような政治団体に支えられて知事になっているわけで、一刻も早く真実に基づく訂正をしなければ、責任が問われる」と指摘しています。

【上脇教授 政治とカネの問題20年以上追及】
伊原木知事の後援会関係者を告発した上脇博之教授は憲法学の専門家で「政治とカネ」の問題を追及する活動を20年以上続けています。
政界を大きく揺るがす事態となっている自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題についても上脇教授は、去年11月の「しんぶん赤旗」のスクープをきっかけに、独自の調査でおよそ5800万円が政治資金収支報告書に記載されていないことを見つけ告発しています。
上脇教授は「政治とカネ」の問題を追及し続ける理由について「議会制民主主義の実現には、できるだけ民意を多様に反映し、国会に国民の縮図をつくることが最低限必要だが、今の政治資金や選挙の制度はこれをゆがめている」と説明しています。
現在の制度は、いわゆる「リクルート事件」などの政治腐敗の問題を受けて行われた平成6年の政治改革によって形づくられました。
「カネのかからない選挙」として小選挙区制の導入が決まったほか、政党助成金の制度も創設されましたが、上脇教授は「不正なカネに手を出さないようにと、政党助成金も導入されたのに、今回、与党第一党の自民党が裏金を作っており、政治改革は失敗だった」と指摘しています。
そのうえで「法律を見直してさらに資金の透明性を高め、企業献金や政党助成金なども廃止し、国民主権にふさわしい制度にしないと政治は変わらない」として、今後も「政治とカネ」の問題を追及していく決意を示しています。