吉備中央町 浄水場から有害性指摘物質 農作物の風評被害懸念

吉備中央町の浄水場の水から、有害性が指摘されている物質が、国の暫定的な目標値よりも極めて高い濃度で検出されたと町が公表してから24日で1週間です。
地元の農家などは、この水を使用していない農作物の風評被害を懸念しています。

吉備中央町の「円城浄水場」では、有機フッ素化合物「PFAS」の一部で、有害性が指摘されている「PFOS」と「PFOA」が、令和2年度の調査で国の値の16倍、令和3年度は24倍、令和4年度は28倍と極めて高い濃度で検出されました。
浄水場の近くの円城地区は「円城白菜」と呼ばれる白菜の産地です。
親子2代にわたっておよそ60年間、白菜を栽培している農家の片山友孝さんは、11月から始まる本格的な出荷を前に、風評被害を心配しています。
白菜をはじめとする円城地区の農作物は、浄水場の水源となっていた「河平ダム」ではなく、水質検査で安全性が確認された「日山ダム」の水を使っていますが、片山さんはそうした情報が消費者にきちんと伝わらず、敬遠されるのではないかと不安に感じています。
片山さんは「農作物は上水道とは違う水を使っていることを知ってもらい、円城白菜を今までと変わらず食べてもらいたい」と話しています。

【道の駅では張り紙を掲示】
円城地区の農作物や加工品を販売している道の駅「かもがわ円城」では、問題が発覚したあと、上水道の水を使ったみそや漬物などの加工品を店頭から撤去し、生産者に引き取ってもらったということです。
また「野菜は大丈夫なのか」などという問い合わせが寄せられているということで、これから旬を迎える「円城白菜」などの野菜やお米については「有機フッ素化合物が検出されていない水を使用しています」という張り紙を掲示して、理解を求めています。
道の駅「かもがわ円城」の田原次郎駅長は「特産の円城白菜が出たばかりのタイミングで、こういうことが起こったことが残念だ。野菜類は安心できるものなので、ぜひいつも通りお客さんに来てほしい」と話していました。

【加工品生産の農家は】
円城地区の農家・小林豊さんは、餅などの加工品の製造・販売を手がけています。
水道水を飲み水として利用しないように町から連絡が来たあとすぐ、町内だけでなく岡山市内のホームセンターも回って、500リットルと300リットルの水が入るタンクをあわせて4個購入したということです。
町の給水車から供給された水をタンクにため、そこから電動ポンプを使って加工場の蛇口に送って餅づくりに使えるようにしています。
小林さんは20年近く前から、自身の田畑でとれたもち米や野菜などを使った加工品作りに取り組んでいて、今回の問題は「こしがあっておいしい」と評判の餅づくりが、本格的に始まるやさきの出来事でした。
小林さんは「安全安心が一番なので、きれいな水で加工品を作らないといけないと思い、いち早く対応した。安全できれいな水でお餅をつくので、安心して食べてほしい」と話していました。

【別のダムから取水へ】
この問題を受けて吉備中央町は、円城浄水場の原水を別のダムに変更する作業を進めています。
吉備中央町は、円城浄水場がこれまで水を引いていた河平ダムから北東に2キロほど離れた場所にある日山ダムの水質検査を10月16日に行いました。
その結果PFASの値は、国の暫定的な目標値の1リットルあたり50ナノグラムを下回る5ナノグラム未満だったということです。
このため町は、日山ダムを円城浄水場の原水として活用するため10月18日から水を引き、試験的な運転を始めました。
今後、水の浄化に使う活性炭をすべて交換し、配水管なども洗浄したうえで水質検査を行い、安全性が確認されれば、本格的な運転を始める予定にしています。
吉備中央町水道課は「11月中には円城浄水場から水を送っている地域で、水道水が問題なく使えるようにしたい」と話しています。

【町が健康相談の窓口設置】
また吉備中央町は24日、住民からの健康相談に応じる窓口を開設しました。
窓口は土日祝日を含めた毎日午前8時半から午後5時まで開いていて、電話や保健課の窓口で職員が対応にあたります。
吉備中央町保健課は「健康への影響については現在、確定的な知見はないが、専門家の意見を聞きながらどのように対応していくのか検討していきたい」としています。