吉備中央町の浄水場の水からPFAS検出 町が水を配り対応

吉備中央町の浄水場の水から有害性が指摘されている有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」の2つの物質が国の暫定的な目標値の28倍にあたる極めて高い濃度で検出されました。
今のところ健康被害の報告はないということですが、町は該当地域の世帯に水道水を飲み水として利用しないよう呼びかけています。

これは17日、吉備中央町の山本雅則町長などが会見を開いて明らかにしました。
それによりますと、吉備中央町にある円城(えんじょう)浄水場の昨年度の水質調査で、有機フッ素化合物「PFAS」の一部で、有害性が指摘されている「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」が国の暫定的な目標値の1リットルあたり50ナノグラムに対して、28倍にあたる1400ナノグラム検出されたということです。
町によりますと、今のところ原因は分かっておらず、健康被害の報告はないということです。
町はこの浄水場から水を送っている522世帯あわせておよそ1000人に対し、水道水を飲み水として利用しないよう呼びかけるとともに、給水車を出したりペットボトルの水を配布したりする対応をとっているということです。
この浄水場については令和3年度の調査でも国の暫定目標値を大きく上回る1リットルあたり1200ナノグラム検出されていましたが、町は「水道法に定められた検査項目ではなく、飲み水として適切だ」と判断し、結果を公表していませんでした。
町では円城浄水場の水の浄化に使う活性炭を交換するほか、別のダムの水をこの浄水場の原水として活用することも検討しているということです。
山本町長は「28倍という高い数値が出て驚いている。原因究明が必要なので、県と協議しながら対応していきたい」と話していました。

【うどん店が臨時休業】
浄水場から1キロほど離れた道の駅「かもがわ円城」にあるうどん店は17日、臨時休業しました。
吉備中央町によりますと、うどんを作るために必要な水が用意できなかったためだということです。
18日は定休日となっていて、水をためるタンクなどの設備を整えたうえで19日から営業を再開するということです。
道の駅「かもがわ円城」の田原次郎駅長は「うどん店は水を使うので閉めるしかないと思い、スタッフに指示を出して、休業の貼り紙をした。店を閉めるのは申し訳ないが、安全が確認できないうちはしかたがないと思う」と話していました。


【岡山県が町に連絡】
岡山県によりますと、水質調査で基準値や国の暫定的な目標値を超えた場合、県に報告するよう市町村に通知していたということですが、吉備中央町から報告はなかったということです。
全国各地で「PFAS」が検出されて問題になっていたことから、県の職員が過去も含めて県内すべての結果を調べたところ、吉備中央町の円城浄水場で国の値をはるかに超えて検出されていたことに気づき、町に連絡したということです。
今回の問題を受けて県は、今後は県としても結果を確認するとともに、市町村に対して17日付けで「PFAS」が国の値を超えた場合、必ず県に報告するよう改めて通知したということです。

【PFASの影響は】
有機フッ素化合物のPFASは、1万種類以上が存在するとされ、その中の「PFOS」と「PFOA」という2つの物質は発がん性や子どもの成長への影響などが報告されています。
国は1リットルあたりのPFASの濃度を50ナノグラムとする暫定目標値を設定し、令和2年度から水質検査の実施に努めるとする項目に追加しました。
PFASの環境省専門家会議のメンバーでもある京都大学大学院の原田浩二准教授は「1000ナノグラムを超えているのは、水道水の汚染の中では極めて高い状況だ。発生源はどこになるのか、低減対策などが可能かどうかについて検討する必要がある」話しています。