軍事侵攻1年半 避難のウクライナ女性“日本との懸け橋に”

ロシアによるウクライナへの侵攻が始まって24日で1年半です。
避難して総社市の臨時職員として働く女性は、「日本との懸け橋になりたい」と来月(9月)退職して、ウクライナ文化を広める仕事を始めることにしています。

ウクライナの首都キーウ出身のチジェンコ・アロナさん(34)は、去年8月、総社市に避難し、翌9月からアートに携わる仕事をしていた経験を生かし、市の臨時職員として働いています。
これまでに絵画の巡回展を市内の小中学校で企画したほか、オンラインを含めて、30校近くの学校で戦争や平和について講演を行いました。
アロナさんは、総社市で充実した生活を送れることに感謝する一方、現地にとどまることを選んだ家族や友人たちのことを思うと、罪悪感があると話します。
母国を助けるためには、日本に住む自分が日本の人たちに対して働きかけて継続して支援してもらうような取り組みが必要なのではと考えたアロナさん。
そのひとつとして、ウクライナの文化を伝える展示会を企画し、地元の岡山県立大学を会場に教員らの協力を得て、伝統人形「モタンカ」を飾り、文化や歴史について書かれた本を並べました。
ウクライナに興味を持ってもらうだけでなく、歴史的な背景なども説明することで深く理解してもらうおうと、アロナさんは大学生たちに、この人形はお守りとして結婚式や誕生日などの記念日に贈られるもので、目がないのは「魂を盗まれる」とされていることなどを熱心に伝えていました。
こうした活動を広げようと、アロナさんは、来月(9月)市役所を退職し、アートセンターを立ち上げて、ウクライナの映画や本などを紹介するイベントを開きたいと準備を始めています。
アロナさんは、「これまでの日本の支援に感謝の思いも込めて、日本とウクライナの芸術を融合するなどして寄付を募っていきたい。私は戦いには行けないし、医療従事者にもなれないけど、私は私のやり方を探して母国を助けたい。日本との懸け橋になりたい」と話しています。

【7割余が日本での長期滞在を希望】
ウクライナから日本に避難してきた人たちを支援している日本財団が避難者に行ったアンケートで日本での長期的な滞在を希望する人は7割あまりと増加傾向にあることが分かりました。
日本財団は18歳以上の避難者を対象に継続的にアンケート調査をオンラインで行っていて、ことし3月から6月にかけて3回目の調査が行われ、1077人が回答しました。
この中で帰国の意思を尋ねた質問では、▼「できるだけ長く日本に滞在したい」が33.1%、▼「ウクライナの状況が落ち着くまではしばらく日本に滞在したい」が39.4%と、あわせて72.5%となり、去年11月から12月に行った前回の調査から7ポイントほど増加しました。
「なるべく早く帰国したい」は2.7%でした。
現在の就労の状況を尋ねた質問では、「働いている」が42.5%、「働いていない」が57.5%でした。
「働いている」と答えた人が前回から3%ほど増加したほか、「働いていない」と答えた人のおよそ6割が「仕事を探している」と回答しました。
一方、日本語が話せるかどうかを聞く質問では、「ほとんど話ができない」、「少し話ができる」と答えた人は8割あまりに上っています。
日本財団ウクライナ避難民支援室の佐治香奈さんは「日本で長く滞在するために働いたり仕事を探す人が増えているとみられる。日本語の習得も課題となっていて、生活する地域を含めた支援体制を作ることが引き続き求められる」と話していました。
【岡山での支援の現状は】
ウクライナから岡山県に避難した人は、24日時点で、岡山市、倉敷市、総社市、笠岡市の10世帯13人です。
県内の各自治体は▼住宅を無償で提供したり、▼子どもの保育所や病院の紹介、▼生活費に充ててほしいと募金を集めて贈ってきました。
一方、日本語を話すことができないなど「ことばの壁」があり、働く上で苦労している人もいて、各自治体は避難者の要望を聞きながら、支援を続けたいとしています。
日本赤十字社岡山県支部のまとめでは、去年3月から先月(7月)まで4700万円あまりの募金が寄せられました。
しかし、募金額は減少傾向でロシアの軍事侵攻から1年が経過した▼ことし2月は230万円を受け付けましたが、▼3月は222万円、▼4月は83万円、▼5月は20万円、▼6月は39万円、▼先月は8万円となっていて、日本赤十字社岡山県支部は継続的な支援を呼びかけています。