県医師会が高齢者施設対象に24時間相談に応じる窓口設置へ

新型コロナウイルスに感染した高齢者の命を守るため、岡山県医師会は、県内の高齢者施設を対象に、電話で24時間、医師が相談に応じる窓口を設置する方針を固めたことが分かりました。
県医師会は、ほかの都道府県に先駆ける取り組みだとしています。

新型コロナの感染が拡大するたびに、高齢者施設から救急搬送される患者が増えるため、県医師会は、速やかに医療につなげようと、県内の高齢者施設を対象にした電話相談窓口を設ける方針を固めました。
窓口は岡山大学病院に委託し、救急科の医師が24時間365日応じる計画で、ことし9月に開始する予定です。
医師は電話で問診を行い、入院の必要があると判断すれば、施設から病院に患者を搬送するということです。
およそ80か所ある介護老人保健施設から開始し、最終的には特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、およそ2000か所ある県内すべての高齢者施設に拡大する計画です。
日本医師会によりますと、こうした取り組みは岡山県以外で把握していないとしていて、県医師会はほかの都道府県に先駆ける事例だとしています。
NHKの取材に応じた岡山県医師会の松山正春会長は「感染症で亡くなる人をなくすことが医師の一番の願いだ。コロナ禍で得た知識を忘れず、今後の新しい感染症も見据え体制強化を進めたい」と話していました。

【背景は高齢者の死亡率の高さ】
岡山県医師会が高齢者施設を対象にした電話相談窓口をつくる背景にあるのが、新型コロナに感染した高齢者の死亡率の高さです。
岡山県のまとめでは、新型コロナが5類に移行したことし5月8日までに、感染して死亡した人は857人いますが、このうちの9割以上が70代以上でした。
新型コロナに感染した施設の高齢者について、救急搬送が必要か、経過観察でいいのか、そうしたことを迅速に判断するには、地域の救急現場を熟知する救急科の専門医が得意としています。
県医師会は、岡山大学病院に委託して窓口を設けることで、治療の遅れを防ぐとともに不要な救急搬送を減らし、結果として負担の軽減につながることが期待できるとしています。
またほかの新たな感染症などへの対応を考える上でも、こうした補完的な体制の整備と構築が必要であるとしています。

【県の受け入れ体制は充実】
県内で新型コロナの外来診療を行う医療機関は、ことし5月の5類移行前は658でしたが、その後段階的に増やされ、7月21日の時点で1028となっています。
また入院患者を受け入れる病院は、5類移行前に比べて、およそ2倍の152に拡充されるなど、県は新型コロナ患者の受け入れ体制を整えてきました。
県新型コロナウイルス感染症対策室は「医療提供体制は整ってきているが、感染が疑わしい場合には急に受診せず、まずは医療機関に連絡をしてから受診してほしい。また事前に検査キットを購入しておくなど、あらかじめ準備をしておくようお願いしたい」と話しています。