浅口・圓珠院の“人魚ミイラ” 研究グループ調査「見せ物か」
浅口市の寺院に伝わる「人魚のミイラ」について、大学などでつくる研究グループが調べた結果、人の手によって作られたものであることが分かりました。
研究グループは、19世紀ごろに見せ物として作られたのではないかとしています。
この「人魚のミイラ」は「人魚干物」と記された書きつけとともに、浅口市の「圓珠院」に所蔵されています。
全長が30センチほどで、サルのような顔つきに、魚のようなヒレがついています。
倉敷芸術科学大学や倉敷市立自然史博物館などでつくる研究グループは、正体に迫ろうと去年2月から、エックス線で内部を撮影するなど科学的な調査を進め、最終報告書がまとまったことから、7日に会見を開きました。
それによりますと、頭骨やろっ骨などがなく上半身は紙や布で作られていて、下半身はうろこの形態などから、日本の沿岸に生息するニベ科の魚の特徴がありました。
このうろこについて、時間が経過すると減少する「放射性炭素」を使い測定したところ、1800年代後半のものだと推定されたということです。
また民俗学的な分析も行われ、研究グループは、信仰の対象ではなく興行などの見せ物として19世紀ごろに作られ、その後、寺院に持ち込まれたのではないかと結論づけました。
倉敷芸術科学大学生命科学部の加藤敬史教授は「国内外で『人魚のミイラ』は複数見つかっているが、科学的な調査はほとんどされていなかった。私たちの研究をきっかけに、今後同じような研究が行われて比較されることで、今回わからなかった作り手の解明につながればいい」と話していました。
「人魚のミイラ」を所蔵する浅口市の圓珠院の柆田宏善住職は「この『人魚のミイラ』には作った人、保存してきた人、そして珍しいものとして祈りや願いを託してきた人、さまざまな人の思いが宿っています。その思いは、これからも続くものですから、私はこの『ミイラ』を守り伝えていきたいです」と話していました。