遊具で死亡事故1年 審議会は年内にも報告書まとめる方針
岡山市の保育園で、2歳の男の子が遊具に首を挟み、その後死亡した事故の発生から14日で1年です。
外部の専門家による市の審議会は、再発防止に向けた対策を話し合っていて、年内にも報告書をまとめる方針です。
事故は去年10月14日に、岡山市北区の保育園で発生しました。
すべり台などを備えた複合遊具で遊んでいた2歳の男の子が、10センチあまりの隙間に首を挟まれ、男の子はおよそ1か月後に死亡しました。
事故を検証するため、岡山市は医師や弁護士・児童福祉の専門家など5人のメンバーによる審議会を、ことし3月に立ち上げました。
審議会はこれまでに3回の会合を開き、事故が起きた保育園では、配置していた職員の数が適切だった一方で、事故の現場が死角にあったという当時の状況を確認しました。
また事故を受けて、岡山市が専門業者に委託して、市内にある178か所の保育施設で、遊具の緊急点検を行った結果、15の施設でブランコのチェーンやネット型の遊具のロープが劣化し、修繕が必要な状態と判断されたことなどが報告されました。
審議会は11月にも会合を開き最終的なとりまとめを行い、年内までに報告書をまとめて市長に提出する方針です。
子どもたちの遊具について、保育施設に設置してあるものついては、決まった安全指針などはありません。
それぞれの施設の管理者に任されているのが現状です。
こうしたなか、倉敷市は子どもたちの安全を守ろうと、市内にある公立の保育所や幼稚園など20の施設を対象に、遊具の点検マニュアルをつくっています。
そのマニュアルをもとに、施設の職員たちは、20年ほど前から月2回定期点検を続けています。
そういう取り組みの成果もあり、倉敷市によりますと、これまでのおよそ20年間、市内の保育所や幼稚園で、大きな事故は起きていないということです。
市内の水島保育園は、保育士が5人から6人ぐらいで1回30分ほどかけて、園内にあるブランコや鉄棒など8種類の遊具の点検を行っています。
保育士たちは市が作成した点検表に沿って、目で見て、触るなどして、壊れていないかや老朽化していないかチェックします。
このうち、ジャングルジムは10の点検項目があり、子どもが触れて肌をけがしないよう塗装が剥がれた場所がないかや、ぐらつきや破損していないか確認するため、専用のハンマーでたたいてふだんと変わった音がしないか入念に確認していました。
市のマニュアルでは、施設の規模に応じて複数の人で点検するよう求めています。
この保育園は、点検結果のばらつきをなくすため、園長と副園長を除くフルタイムで働く保育士全員が関わるようにしています。
また点検の目的や方法をきちんと伝えようと、グループには必ずベテランと若手を一緒に配置するよう工夫しているということです。
そして遊具が安全なのか判断に迷った場合は、倉敷市に報告し、専門業者を呼んでもらいプロの目での点検が行われています。
こうしたことが評価され、ことし春には、遊具事故を防止する先進的な取り組みとして、シンクタンクがまとめた参考事例の一つとして紹介されました。
水島保育園の林知佐子園長は「いろんな職員で気づきの部分を共有しながら、園全体が同じような方向性で危険意識を持って保育にあたっていきたい」と話しています。
保育の現場に詳しい、佛教大学教育学部の佐藤和順教授は「保育所の遊具の安全は法律で指針がなく、どうしても現場の先生頼みになってしまう。限界があるので、積極的に自治体や国が安全対策を推進する必要があるのではないか」と指摘します。
そのうえで「遊具は使い方によってはとても危険なので、安全点検だけでなく、日頃から子どもに使い方についてもしっかり指導することが大切だ。また子どもの行動は予測できないことがあるので、どうやって大人たちが子どもを守っていくか、考える必要がある。職員の勤務状況を踏まえたうえで、見守りの態勢を検討するなど『見えない問題を見えるようにする』ことが欠かせない」として、潜む危険性や問題を見える化していくが重要だと述べました。