最高裁 大分地裁などの記録廃棄問題で報告書公表

社会的に注目された少年事件や民事裁判の記録が大分を含む各地の裁判所で廃棄されていた問題で、最高裁判所は25日、廃棄の経緯や保存のあり方についてまとめた報告書を公表しました。
「後世に引き継ぐ記録を多数失わせてしまったことを深く反省している」と謝罪し、今後は、国民共有の財産であることを組織的に共有していくとしています。

重大事件の記録の廃棄が各地で発覚したことを受けて、最高裁判所は有識者委員会を立ち上げ、およそ100件の少年事件や民事裁判について経緯などを調査してきました。

報告書の公表にあたって最高裁の小野寺真也総務局長は記者会見で、「今回の一連の問題は、最高裁による不適切な対応に起因している。後世に引き継ぐ記録を多数失わせてしまったことを深く反省し、事件に関係する方々を含め、国民の皆様におわび申し上げる」と述べて謝罪しました。

報告書によりますと、永久的に保存する「特別保存」に指定した6件の民事裁判の記録を廃棄した大分地方裁判所では担当者が特別保存に指定されたあとの処理を誤り、廃棄に至っていました。

担当の管理職が定められたとおり記録の表紙に赤色で特別保存と記載していなかったほか、システム上もマニュアルで定められたものと異なる所に情報を入力していたということです。

その結果、システムから出力した目録に保存期間が過ぎた記録としてこれらの6件が記載されてしまい、記録自体も通常の棚に保管されていたため、ほかの職員は特別保存だと気付かず、誤って廃棄されました。

その背景としては「担当管理職にさまざまな事務が集中し、繁忙がうかがわれたのに、幹部職員は業務量の調整などをしていなかった」としています。

今後の対応については、「国民共有の財産として保存し、後世に引き継いでいく必要がある」として、歴史的・社会的な意義がある記録が含まれていることを組織的に共有するため、規程に「保存する意義」を明記するほか、特別保存に指定する基準や判断時期の見直し、専門家の意見を聞くため常設の第三者委員会を設置することなどを検討するということです。

【ジャーナリストの江川紹子さんの話】
裁判記録の取り扱いに詳しいジャーナリストの江川紹子さんは報告書で明らかになった廃棄の原因について、「神戸の事件では特別保存するかどうかを判断する裁判所の所長が自分の役割を認識していなかった。いかに裁判所がこれまで記録を軽んじていたかがよくわかる」と批判しました。

一方で、「今まで裁判などの記録を『事件処理のため』と認識していたところから、『国民の共有財産』という認識にたどり着いた事は大きく、裁判所の意識の大転換と言える」と評価しました。

「今後は制度設計の進捗を公開するとともに、今だけでなく10年、20年先も保存や廃棄に関する仕組みがしっかり機能するように仕組みを整えることが重要だ」と指摘しています。