遺伝性アルツハイマー病の新薬治験 新潟大などが国内で開始

遺伝性のアルツハイマー病の人を対象に新潟大学と東京大学などのグループが新しい薬の国内での治験を始めたと発表しました。
遺伝性のアルツハイマー病を対象にした治験はアルツハイマー病の新たな治療法の開発などにつながるとして世界中で注目されていて、国際的な治験の一環として行われるということです。

これは14日、新潟大学脳研究所の池内健教授などのグループが会見を開いて発表しました。
この治験は、アルツハイマー病の患者の脳にたまる「タウ」と呼ばれる異常なたんぱく質を取り除く特殊な抗体の効果や安全性を調べるもので、海外で進められている国際的な治験の一環として行われるということです。
対象となるのは、アルツハイマー病を発症するリスクが極めて高くなることが知られている3種類の遺伝子を持つ人たちで、国内では30代から50代の4人が参加する予定だということです。
こうした遺伝性のアルツハイマー病は非常にまれで、全体の1%に満たないとされていますが、遺伝子を調べることで発症前に診断できることから、早期の治療が必要とされるアルツハイマー病の治療法の開発や研究の分野で世界的に注目されています。
アルツハイマー病の治療薬は去年、病気の原因とされる「アミロイドβ」という別のたんぱく質を取り除く薬が国の承認を受けています。
会見で池内教授は「遺伝性のアルツハイマー病の人たちで有効性が示されれば、その成果はより患者の多い一般的なアルツハイマー病の治療法の開発の加速につながるはずだ」と話していました。

【「タウ」とその治験薬とは】
アルツハイマー病の詳しい原因はまだ分かっていませんが、患者の脳には、発症するかなり前から「アミロイドβ」と「タウ」という2種類のたんぱく質がたまることが知られていて、いずれも病気の発症に深く関わっていると考えられています。
このうち「アミロイドβ」についてはこれまで盛んに研究が行われ、去年、「アミロイドβ」を取り除く薬、「レカネマブ」が認知症の症状の進行を遅らせる効果が確認されたとして国の承認を受けています。
一方、「タウ」も蓄積すると脳の神経細胞を壊すことが分かってきていて、「アミロイドβ」に続く治療のターゲットとして世界中で研究が行われるなど、注目されています。
今回の治験では、「タウ」を取り除く抗体を投与するグループと有効成分が入っていない偽の薬を投与するグループに分けて、効果や安全性を調べるということです。
また、治験では、全員がすでに承認されている治療薬「レカネマブ」の投与も受けるということで、2つの薬を併用することの影響などについても調べるということです。