カメムシ 過去10年で最多 県が農家に注意呼びかけ

ウメやカキなどの果物に被害をもたらす害虫・カメムシの発生が全国的に増えていて、奈良県の調査でも過去10年で最も多くなっています。
県は、今後もさらに増えるおそれがあるとして、県内全域に注意報を出して農家に対策をとるよう呼びかけています。

奈良県では、ウメやカキなどの果汁を吸って実を傷めるカメムシについて、毎年1月に県内18か所で冬を越した成虫の数を調べています。
それによりますと、「チャバネアオカメムシ」が1か所あたりの平均で平年の3.8倍にあたる29.2匹見つかり、過去10年で最も多くなったということです。
さらに、先月(4月)から今月(5月)にかけて、実際に飛んでいるカメムシの数を複数地点で調査したところ、一部では1日あたり100匹以上が飛んでいることがわかりました。
県は、暖冬などの影響で冬を越したカメムシが多く、来月(6月)からは繁殖も進んでさらに増えるおそれがあるとし、2年ぶりに県内全域に注意報を出して農家に対策をとるよう呼びかけています。
具体的な対策としては、▼活動が活発になり始める夕方にカメムシを誘引する明かりをつけないようにすることや、▼確認された場合は活動が鈍い早朝に薬剤を散布することが効果的だとしています。
カメムシについての注意報の発表は、全国で相次いでいます。

【県の研究施設でも多数観測】
五條市にある県の果樹・薬草研究開発センターでは、研究用に育てられているウメの木で、カメムシが果汁を吸って小さな穴があいている実が多く見られます。
センターでは、「予察灯(よさつとう)」という虫を捕獲する装置を設置していて、先月(4月)末からカメムシの観測を始めていますが、多い日で200匹以上捕獲されたということです。
センターによりますと、ことし大量にカメムシが発生している原因として、▽カメムシのエサになるスギやヒノキの実などが豊富だったことや、▽暖冬のため冬を越えて生き残る成虫が多かったことなどが考えられるということです。
奈良県農業研究開発センターの米田健一 総括研究員は「気温が高い夜にカメムシの活動が活発になるため、今後も果樹への被害が増えるおそれがある。夏ごろまで警戒し、状況に応じて農薬を使うなどの対策をとってもらいたい」と話していました。

【果樹農家もカメムシ被害大】
天理市の農家では、カメムシが大量に発生したことにより大きな被害を受けています。
農家の松本英夫さんのさくらんぼ畑では、先月(4月)下旬からカメムシが大量に発生したということです。
このため、松本さんは、薬剤を散布する回数を1回増やしたほか、虫や小鳥から果実を守るための防護ネットを例年より早く設置したということです。
早めの対策によってカメムシの被害は多少減らせましたが、ネットの隙間からカメムシが入って実を傷つけているうえ、薬剤の散布でミツバチを介して行っている受粉の期間が短くなり、着果数が少なくなった可能性があるということです。
さらに、先月、気温が低かったこともあり、出荷量は平年の2割程度になっているということです。
松本さんは、「自然相手の仕事なので仕方ないことではあるが、40年農家をやっていてカメムシの被害がここまで大きいのははじめてで、めいっている。メインで生産している柿はネットもつけられないので心配だ」と話していました。

【部屋に入ってきたら 対策のポイントは】
昆虫の専門家によると、住宅街などにいるカメムシは今の時期は減る傾向にあるということですが、自宅のベランダや部屋の中に入ってきてしまった場合どう対処したらいいか、害虫の対策を行う大阪府の担当者に聞きました。
生活圏に入り込む害虫への対策を担当する大阪府環境衛生課によりますと、カメムシを自宅に入れないためには、カメムシが活動的になる夜間の対策が重要だといいます。
カメムシは光に集まる習性があるため、▼室内の光を漏らさないようカーテンをしっかり閉めたり、▼夜間に洗濯物を干さないようにしたりすることが大切で、特にカメムシが好むとされる白っぽい色の洗濯物は注意が必要だといいます。
また、市販されているカメムシが嫌う臭いの薬剤をベランダなどにまいたりするのも有効です。
また、部屋のなかに入ってしまった場合はくさい臭いを出されないよう刺激を与えないことが大切で、ペットボトルを輪切りにしたものや、丸めた紙などを使って捕まえ、部屋の外に放す方法が有効だといいます。
大阪府環境衛生課の谷口直生 主査は、「農家だけでなく、一般の家庭からもカメムシに関する相談が少しずつ増えてきています。府内でよく見られるチャバネアオカメムシは人を刺すことはないので、まずは刺激を与えないことが大事です」と話していました。