奈良 興福寺五重塔で120年ぶり修理に向け素屋根の建設進む

奈良市にある興福寺の五重塔は、およそ120年ぶりの大規模な修理工事に向けて塔を覆う建物の工事が進んでいます。

奈良市にある興福寺の国宝・五重塔は、高さおよそ50メートルで古都・奈良の景観を象徴する建物のひとつですが、屋根瓦や木材などの傷みが激しくなっているため、来年度(令和7年度)からおよそ120年ぶりに大規模な修理工事が行われます。
修理に向けて去年(令和5年)7月から風や雨を防ぎ、足場となる「素屋根」と呼ばれる作業用の覆いを設置する工事が始まっていて、16日はその様子が報道関係者に公開されました。
工事では塔の近くに設置された大型のクレーン2基が鉄骨の柱をつり上げて塔の周囲に次々と骨組みを組み立てていきました。
素屋根は、ことし11月ごろに塔の全体を覆う見込みで、その後は修理工事の期間を含めて塔が見えない状態が7年ほど続くということです。
修理を担当する奈良県文化財保存事務所興福寺出張所の中田宏和 主任は「素屋根ができると7年ほど塔は見えなくなるが、修理の完成を楽しみに待ってもらいたい」と話しています。

古都・奈良のシンボルのひとつ、興福寺の五重塔が7年ほど見られなくなることについて、多くの人から惜しむ声が聞かれました。
市内の80代の男性は、「もう見えなくなると聞いて見に来ました。残念な気持ちですが、7年後に修理が終わったらまた見に来られるように長生きしたい」と話していました。
塔の近くで土産物店を営む70代の男性は、「ここでずっと商売をしているが、五重塔と鹿と大仏は奈良にとって当たり前の存在だ。猿沢池に映った塔の姿がきれいだと客にも案内してきたので見えなくなるのは残念だが、早く修理が終わって、またきれいになった姿を見せてほしい」と話していました。
興福寺の辻明俊 執事長は、「塔は見えなくなるが、修理を通して歴史や文化を継承する機会に立ち会えることはとても貴重な時間だ。県内で最も高い五重塔を覆う大きな素屋根を見に来てもらい、修理中の塔の姿を想像してほしい」と話していました。