国道169号 2か所で通行止め続く 周辺への影響も

国道169号線は土砂崩れの影響で、上北山村と下北山村の一部の区間でそれぞれ通行止めとなっています。
2つの区間に挟まれた地区では、住民の暮らしへの影響が懸念されています。

今月(4月)1日、上北山村西原の国道169号線で土砂崩れが発生し、県は現在、付近のおよそ3.4キロを通行止めにしていますが、今のところ復旧のめどはたっていません。
国道169号線は、今回の現場から南におよそ15キロ離れた下北山村上池原でも去年12月に土砂崩れが発生していて、3か月以上たった現在も通行止めとなっています。
2つの通行止め区間に挟まれた地区にはう回路があるため、「孤立状態」にはなっていませんが、道路の道幅は狭く、2トンを超える大型車両は通行できない状態となっています。
このため県は、下北山村の通行止めについて、今月2日から消防や救急など緊急車両に限って通行できる措置を取っています。
この現場周辺では、県が仮設の桟橋を建設していますが、山の斜面の深い部分から土砂が崩れる「深層崩壊」の危険性があることが新たにわかり、桟橋が完成しても通行できるのは緊急車両のみになるということです。
4日は、県庁で下北山村の国道の復旧に向けた有識者会議が開かれ、本格復旧に向けた工事には高度な技術を要するため、県に代わって国が工事を実施することが報告されました。
県では、提言をもとに国と協力して、なるべく早く復旧できるよう努めるとしています。

【上北山村 山室潔村長“とにかく早く復旧を”】
上北山村の山室潔 村長は村の現状について、「すべてに影響が出ている。物流、人流が止まっていて、不便なことこの上ない。食料も必要最小限を確保しているのが現状で、住民はとにかく早く復旧してほしいと思っている」と話しました。
最も困っているのは医療と福祉への影響だということで、「今年度から常駐ではなく医師に診療に来てもらっているが時間が限られているし、う回路で来るので時間もかかる。また、介護が必要な人は入浴などこれまで受けていたサービスを受けられないと体調を崩す可能性もあるので心配している」と話していました。
一方、村が力を入れている観光業への影響については、「これからの時期は稼ぎ時ですが、いまはそれどころではないという状況です」と話しました。
また、一日も早い復旧を望む一方、土砂災害については抜本的な対策が必要だとしたうえで「住民だけでなく紀伊半島全体にとって重要な道路なので、災害に対して強じんな道を造ってほしい。トンネルを通すなどより安全な方法をとるよう県や国に要望していきたい」と話しました。

【上北山村 住民の生活に影響】
国道169号線で起きた2か所の土砂崩れの影響で、上北山村では村役場がある河合地区など村内の3つの地区が通行止め区間に挟まれ、生活などに影響が出ています。
村によりますと、これらの地区には219世帯およそ340人が住んでいて、地区の外に出入りするためには県道や林道などのう回路を利用する必要がありますが、時間がかかるうえ、大型車両の通行が難しく、人の出入りや商品の運び入れなどに影響が出ているということです。
このうち、河合地区にある村で唯一のガソリンスタンドでは、大型車で運び込んでいたガソリンや灯油などの補給ができなくなり、対応に苦慮しています。
ガソリンスタンドを経営する後岡宏弥 社長は「村の人たちの生活インフラでなんとかしたいと思っているが、このままではガソリンなどが枯渇してしまう」と話しています。
また、国道沿いの道の駅にあるコンビニエンスストアでは、弁当や菓子類、日用品など、多くの商品の仕入れができなくなっているということです。
さらに、村の診療所では医師が村の外から診療に来ているため、診療時間を通常より遅らせて対応にあたっています。
村の河合地区にある義務教育学校では、今月8日に始業式、9日に入学式が予定されていますが、土砂崩れ現場の北側にある西原地区の子どもについては、う回路を使った通学が難しい場合、当面はオンライン学習を利用することも検討しています。