天理市長 “小学校は統廃合しない 公民館などと複合施設に”

天理市が、市内すべての小学校に公民館や公共施設の機能を持たせて今後、統廃合は行わない方針を打ち出しました。

これは4日に開会した天理市の定例市議会で、並河健 市長が明らかにしたものです。
並河市長は施政方針で「公共施設の老朽化と少子化という課題に対して、県内を含め多くの自治体で学校の統廃合が進んでいるが、地域の特性を生かした教育や地域のコミュニティーのあり方などを、あわせて考えることが重要だ」と述べました。
そして現在、市内にある9つの小学校について今後、統廃合せず、公民館や公共施設の機能を持たせた複合施設にする方針を示しました。
市によりますと、こうすることで▼地域の拠点としての役割が期待されるほか▼周辺の施設を集約することで維持管理費の削減につながるとしています。
市は、今回の定例議会に提出している新年度の当初予算案に、複合施設化に関する調査費用などとして、およそ2600万円を盛り込んでいます。
並河市長は「小学校を複合施設にすることで、地域に根ざした学びを行い、子どもたちのみならず、地域の人も刺激を受けていくような教育をしていきたい」と話しています。
また、市では全国的な問題となっている教職員の負担を減らすため、新年度から▼すべての小学校を「教育」、「放課後」、「学校内での地域活動」の3部制にして時間を分け、教職員は「教育」の時間帯の業務に専念する体制を整えるほか▼保護者からの要望や相談を、教職員に代わって校長経験者のOBなどが応じる窓口を、新たに設けることにしています。

全国のほかの自治体と同様に、天理市でも少子高齢化に伴って子どもの人数が減少しています。
市によりますと、市内の公立小学校に通う子どもの数は▼1989年度にはおよそ4100人でしたが▼今年度(2023年度)は2700人▼さらに2033年度には2000人にまで減ると推計されています。

【市の方針について】
市が打ち出した小学校を統廃合せず複合施設化する方針について、60代の女性は「統廃合をすると子どもが学校に通う距離が遠くなり、親の送り迎えの負担や、登下校時の安全に不安があるのでよいと思います」と話していました。
また、70代の男性は「学校の伝統や卒業した後、思い出の場所がなくなってしまうので、学校が存続するのはよいことだと思います」と話していました。

また、天理市の山の辺小学校の今西聡 校長は「通学の利便性だけでなく、高齢者にとっても小学校を残すことが町の活力に大切だという声を聞いている。地域の活動を学校で行うことがこれから増え、地域の中核施設になっていくと思うので、高齢者や小さい子どもなど地域のすべての住民が使いやすい優しい施設になっていけたらいいと思う」と話しています。
また、学校に3部制を導入することについては「教員の業務が増える一方、教員のなり手不足で負担がどんどん増えている。何もかも教員が負担するのではなく、時間帯で責任を持つ主体が変わることで教員の負担が減り、子どもたちの教育に重点を置けるような流れになっていけばいいのではないか」と話しています。
山の辺小学校は、昭和41年に4つの小学校を統合してできた学校です。
現在、児童は269人で、学校によりますと最も多かった昭和41年(655人)に比べて半数以下にまで減っているということです。