法隆寺 世界遺産30年 住職は語る“次の世代につなげたい”

斑鳩町の法隆寺がユネスコの世界文化遺産に登録されてから11日で30年になります。
寺の古谷正覚 住職は「法隆寺を守り、次の世代へどうつないでいくのかを考えるのが私の使命だ」と話しています。

斑鳩町にある法隆寺は、西暦600年ごろの飛鳥時代に聖徳太子によって創建された世界で最も古い木造建築物で、平成5年の12月11日に、兵庫県の姫路城とともに日本で初めてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
登録から30年を迎えたことについて、法隆寺の古谷正覚 住職はNHKのインタビューに応じ「登録された当初は、世界遺産になったという意識はあまりなかった。しかし寺を訪れる人が少しずつ多くなってきたので、外国語のパンフレットを作ったり、それまで暗かった金堂の内部に照明を置いて明るくして見てもらったりと、われわれの意識も少しずつ変わってきた」と述べました。
この30年で寺にとって最大の危機は、新型コロナウイルスの感染拡大でした。
多くの国宝や重要文化財を抱える法隆寺では、その管理や修復、境内の整備などに充てる費用の大部分を拝観料でまかなってきましたが、コロナ禍で参拝者が大幅に減少し、費用を十分に捻出できない事態となりました。
これを受けて去年(令和4年)、古谷住職はみずから会見を開いて寺の窮状を訴え、クラウドファンディングで寄付を募るという異例の策に打って出ました。
その結果、目標額の7倍を超えるおよそ1億5000万円もの寄付が集まり、大きな話題となりました。
これについて古谷住職は「コロナ禍は観光を主な収入にしている寺院にとっては、非常につらい時期だった。法隆寺を心配してくれている人が多くいるということを知ることができたのは、非常にありがたかった」と振り返りました。
また昭和24年の火災で焼損した金堂の壁画については、将来の一般公開を念頭に人数や期間を限定しながら、おととし(令和3年)27年ぶりに公開し、それ以来、毎年公開しています。
寺では、柔軟な発想で文化財を守る取り組みを続けていきたいとしています。
古谷住職は「火災で焼失してしまったが、幸い焼けた建物と壁は残っていて、実際に見ることで文化財の大切さを知ってほしい。事故や火災から文化財を守るのが、私たちが今できる一番大切なことだと思っている」と述べました。
そのうえで今後については「世界遺産条約は、世界のすべての人々によって、遺産を戦争などで破壊されないように次の世代へ受け継ぐというのが本来の趣旨だ。いつどんな事が起こるか想像がつかない世の中で、法隆寺を守り、次の世代へどうつないでいくのかを考えるのが私の使命だと思っている」と語りました。